黒子のバスケ

□傷痕に残るのは君の叫び
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「…応急処置はした、起きたらさっさと出てってくれ」

「…わかった」


青峰は意識を失った高尾を近くにあった村の病院に連れてきた。
応急処置はしてくれたらしいが、高尾は奴隷として扱われていた身、差別を受けているためいい顔はされていない。


「和成…悪ぃ…本当は言い返してぇけど…今はお前が大事だ」


青峰はそう言って高尾の髪を撫でた。
それに身じろいだ高尾の額には汗が滲んでいる。
応急処置はしたもののその後は何もしてくれない、だが大きな傷を負った高尾は高い熱を出す。それは青峰でもわかることだった。


「…はぁ、っ…は、…ぅ…」

「和成…っ」

「…だ、ぃき…」


小さな声に高尾を見れば薄く瞼は開いていて焦点の合わない瞳を頼りなさげにゆらゆら揺れていた。


「…っ」

「だい…き、…無…事?」


こんな時まで、何言ってるんだ馬鹿野郎。
そう言いうより先に高尾の腕がゆっくりと持ち上がって青峰の頬にふれた。


「…だ…い…ちゃん…好き…」

「っオレだってな!!お前のこと…ッ!!」


そこまで言ったとき、病室の戸が開き、先ほどの医師が「出ていけ」と促した。


「っふざけんな!!!コイツは…」

「大ちゃん…やめ…よ?オレ…大丈夫…」


起きあがった高尾を青峰は支えて医師を睨みつけたが、結果は何も変わらなかった。






「……ぅ…」


高尾を背負って宿屋に行き、とまることができた。
だが、時間がたつに連れて高尾の表情が苦しげになっていく。
それを見ていた青峰はだんだんと何かに腹がたってくる。


「……なんでオレをかばったんだよ」

「…っ、なに…言って…んの…?」

「オレのことなんでかばったんだって言ってんだよ!!!」


その声に高尾が目を見開く。

違うこんなこと言いたいんじゃない。


「…っ大ちゃんが怪我する、から……」


「別にかばえなんて頼んでねぇッ!!!」



違う、そんな、そんなの違う。
そんな顔させたいんじゃないのに。



「そーかよ、そーかよっ!!!悪かったな!!」


高尾は起きあがって叫べばふらふらと部屋を出ていった。


「…チッ」


青峰の舌打ちが部屋に誰もいない部屋に響いた。それは後悔。





「う、…痛…っ…」


宿屋から飛び出たものの、傷口がまだ治っていないため痛みが高尾をおそった。
けれど本当に痛かったのは、傷じゃなくて。


「大ちゃんの馬鹿やろー…」


悲しくなって、涙がこぼれそうになる。
それを隠してくれるかのように雨が降り出した。

君が好きなのに。





あんなことが言いたかったんじゃない、ただ自分は、ありがとうと言えばよかったのに。

青峰はため息をついた。



無償に腹が立ったのは、高尾が自分の命をなんとも思っていないから。

それをあんな風に言うなんて絶対に間違っている。


高尾にあんな顔をさせたかったんじゃないのだから。


青峰は立ち上がる。


雨が降り出していた。



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