Fallen spirit

□第四話 -謎-
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「……今吉さん…?」

「黒子君も感じたかい?」


氷室は黒子に問いかける。
確かに今、感じたのは自分たちが追っている彼の気配。


「……一瞬で消えたな」


緑間はその二人には聞こえないように呟いた。
そうだ、今、感じたのは、高尾。


高尾がNo.8の傍にいる。
高尾が、生きている。


それだけで、涙が出そうなくらい幸せだ。






「うるっせぇ!!刺すぞタコ峰!!」

「ンでオレがタコなんだよ!!このバニラアイス!!」

「髪の色でバニラとかいうな!!それだったらお前なんかアレだろ、青ペン!!」

「いやそれ、まんまじゃねーか!!」


「…ウィンドカッター」


その低レベルな宮地と青峰のやり取りは高尾の術によって強制終了した。



あれから青峰と高尾は倒れた今吉を連れ、知り合いの宮地と大坪と木村が暮らす家に転がり込んだ。



「今吉さん、寝てる、静かに」


高尾はそう言ってベッドで眠る今吉を心配そうに見つめる。
それを見て青峰と宮地は小さな声で責任の擦り付け合いを始めた。



高尾は、昔、親に森へ捨てられ獣に育てられた。

そんな高尾が6、7歳の時に宮地が見つけ拾ったのだ。
長い時間をかけて大坪や木村と共に仲を深めた。


そして知り合いの伝で青峰の所に高尾は居候することになった。



だから高尾にとって青峰はもちろん宮地達も大切なのだ。



「…おら、高尾、大坪が帰ってくるから料理手伝え」

「あ、けど、今吉サン、は」

「いーよ、オレがみてるから」


青峰が言えば宮地は心配そうな高尾の腕を引いて部屋を出た。
高尾が気を張っていることに気づいての行動だろう。



「……刺された…のに」


ふ、と思い出したのはあのとき。
確かに自分は体を槍で貫かれた。なのに。


傷一つ、残っていない。



「…今吉サン」


そっと白い今吉の頬にふれる
。温かい。


「アンタ…何者なんだよ…」


その問いに答えてくれる声はなくて、けれど。



「なぁ…アンタのこと…知りてぇのに…守り、たいのに」



眠る君は、何を抱えているの。






「…青…峰?」


今吉が目をさませば、手を握って眠る青峰。


「無事で、よかった…」


何よりも誰よりも、君が大切になっているなんて、気付いていなかった。
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