黒子のバスケ
□寂しがりなのは君と僕
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その日は台風がきたかのような酷い豪雨だった。
部活中、校内アナウンスで下校が命じられた。
「…あ、忘れもんしたわ。諏佐、先に帰ってもええで?」
「そうか?オレちょっと若松に用があるから先行くな、悪い」
体育館をでて、校舎内に入ったとき忘れ物に気づく。
今吉は諏佐を先に帰らせると一人体育館に引き返した。
「部室ちゃうってことは…落としたみたいやな…用具倉庫か?」
一人でブツブツ言いながら歩き回り、この校舎にしてはかなり汚いであろう用具庫へと足をのばした。
片づけの時、たまたまここに入ったのだ。
「……う、埃っぽ…っけほ、…やば、けほっけほっ」
中に入ればかなりの埃っぽさ、早くでようとしたのだが、埃がかなり気管に入ったらしく咳が止まらなくなってしまった。
息をつこうとすればひゅう、となる喉とぶり返す咳に思わずしゃがみ込む。
「今吉、サン?」
聞こえたのは、どうしてか。
「あおみっ…けほ、こほっ」
「っオイ大丈夫か!?」
気がつけば青峰が自分の後ろまできていた。
どうして、なんで。
「っ埃、吸っ…はぁっ、げほっ」
「っアホか、…落ち着け」
青峰はそういって今吉を抱き寄せ、顔を胸板に押しつけた。
「…!?げほっ、あお、みね…っ」
「落ち着け、ゆっくり息しろ。な?」
言われたとおりにするもなかなか咳が収まらず、余計にあわてる。
青峰が舌打ちをし、今吉を抱えあげようとした。
その時、
ガタンッ、
戸の閉まる音と、続いて鍵まで閉まる音。
「っまさか!チッ…閉められたみたいだな…」
「っ、ふ…、げほ、…うそ…やろっ」
ひゅうっ、と喉がなりせき込む。
苦しくて青峰の服にしがみついた。
「今吉サン、ここ埃多いから…少し奥に移動するぞ」
そういって青峰に抱き上げられた。
驚いて思い切り青峰の腕をつかんでしまい「いてぇよ」と苦笑された。
「っひゅ、げほっ……」
「気管に入り込んでんだろ、水で流さなきゃダメだな」
「けほっ…青峰……」
用具倉庫の奥には少しスペースがあり、今吉はそこでつけない息をつく。
「今吉サ…」
「っ!!!」
青峰が動いたとき近くにあった運動用マットを腕がかすり、埃が舞った。
思いきり吸い込んでしまった今吉は激しくせき込む。
「オ、オイっ!!」
「はぁっ…ぅ、げほっごほ、げほっげほっ」
それに慌てた青峰が大きく動き、マットとは別側にあったボールと不安定に重なった跳び箱が崩れた。
「っ今吉サン!!!」
ガラガラと音をたてて崩れる跳び箱やボール。
けれど今吉には一つも当たらない。
なぜなら青峰が今吉に覆い被さって盾になっていたからである。
「げほっ…あ、青峰っ」
「いってぇ…」
青峰が眉を潜める。
バカ、お前が怪我したら…
「…怪我、した、っ…ら…げほっどうし…」
「…今吉サン、…ちょっと黙って」
そういって唇を重ねられる。
「っけほ、何…すん、のや…」
「んーいや、なんか…可愛くて」
「アホ、っけほ、お前…ワシのこと…嫌いになったんやろっ」
「はぁ!?」
「だ、って…昼の約束…破るし、けほっ…屋上の約束だって…」
言ってて女々しすぎる自分が気持ち悪い。
けど、止まらなくて涙も止まらなくて。
「好きちゃうならッ…」
「好きだよ」
青峰の言葉に反論しようとしたのだがその前に涙を拭われ、その指が頬にふれる。
「…それは、アンタが…オレのこと好きじゃないのかと思って…嫉妬させてみた…」
「けほっ、けほ、…アホ…アホアホアホ!!」
「うるせぇっ…好きだっていってんだろが!!」
「うるさ…んっ」
またキスされる。
涙でしょっぱい。
「好きに…大好きに決まってるだろ」
「…好きやで」
そうして、どちらからでもなくまた唇を重ねた。
その後、二人は桃井や教師に発見されたらしい。
end
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