黒子のバスケ

□優しさに、溺れた
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『好きだ』


そういったらアンタは笑ってくれんのか?


そういったらお前は笑ってくれるんか?



半端な贔屓なんかいらねぇ。


半端な優しさなんていらんのや。



誰よりもなによりも、


彼の特別でありたい。







「………っ、う…」


ふ、と意識が浮上した。
ゆっくり瞼をあければ白。


「…あ、目が覚めたか?」

「…諏、佐?」

「保健室に置いてきたとか青峰がいうからよ、休憩中に見に来た」


そういって諏佐は笑う。今吉はマシになった頭痛の中でぼんやりと諏佐を見つめた。


「今日は無理すんな、ちゃんと部活はやっておくから」

「……あ、…スマンな…」

「…別にいいって。じゃ、そろそろ戻るから」


そういい残してベッドから離れる諏佐の背中を見て今吉はまた瞼をおろした。
のだが、


「今吉サン生きてっか?」


あの憎たらしい後輩の声。


「青峰…帰ったかと…思っとったわ」

「あ?んなワケねぇだろ」

「……青峰…本当はお前優しいやろ…」

「はっ!!?」


なんだか、心臓が痛い。
体調の所為なのか本音がすらすらと言葉になる。


「……お前の優しさは…痛い…」


こぼれた本音。
青峰が息を飲んだのが聞こえた。


「………期待する…やろ」


こんな年になって女々しいことこのうえない。
恥ずかしくなって腕で目を覆う。


「…お前といると、…苦しい…」



青峰が何も話さなくなった。
まあそれはそうだろう男からかなり遠回しに告白されているのだから。



「なあ、」

「っ…!!?」



ぎしり、ときしむベッド。
青峰が横になっていた今吉の上に乗り上げた。
避けようにも手を押さえられて動けない。


「…な、んのつもりや?」


「…ッふざけんなよ」



青峰の低い声にビクリ、と身体が反応した。



「オレだってッ!!…アンタが優しいとは毛ほども思わねぇけど…アンタが…余計なとこで贔屓してくんだろ!!」


「それは…ッ」



「オレが強いから…だろ、…ッ半端な贔屓はいらねぇんだよ!!」



何いってるんだこの後輩は。
そんなの…そんなのお前の…



「っんで泣くんだよ…!」


一筋涙がこぼれた。
とまならくて、苦しい。


「…ぁ…、好き……っ……青峰が…ッ好き…だからっ」


「……嘘、だろソレ…」

「…ち、がうッ好き…っ…て、言って…る…」



嗚咽混じりの声で必死に伝える。
青峰が、押さえつけていた片手を解放して今吉の頬に触れる。


「それ、…この意味の好きか?」


今吉が頷けば、途端に青峰の顔が近くなる。

キス、されたんだと気付くまでに時間がかなりかかった。



「オレも同じだよ…」


その言葉に目を見開くも、また唇を重ねられ面倒くさい考えは吹っ飛んだ。


今までの優しさが痛かった。



けれどいつの間にか、その優しさに溺れて息ができないくらいに




君を愛してしまったんだ。








end



保健医の存在ミスディレクション。
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