Fallen spirit

□第一話
2ページ/2ページ




「青くん、オレ、いつも、なに、言った」

「周りをみて術は使え、できるかぎり詠唱はちゃんとしろ…」

「覚えてる、なら、ちゃんと、守る」

「…はい」


あの後、青年を担ぎ家につれて帰った。そして高尾に事情を説明したところ、怒られ説教を受けていたのだ。


「…うん、いいよ、あの人起きる、そしたら、青くん、謝る、いい?」


高尾の言葉に頷けば、ご飯できてる、と笑った。

高尾は昔この森に捨てられ、魔物や獣に助けられた。
その後ヒトに拾われ、今に至る。なのでまだ言葉が巧く繋げないでいるのだ。
なぜか料理と術の詠唱は巧いが。




「にしても、やらかしたなぁ今日は…おっ美味い!」

「ありがと、けど、食べすぎ、だめ」

「へいへいよっと」


なんでもないような話をしながら夕食を食べる。
青峰は、この時間がとても好きだった。





「…ぅ、ん…?」

「よう、目、覚めたか?」


小さな声とともに青年は目を開いた…開いたのかわからないが。青峰は青年をのぞき込む。


「っ…ここ、どこや…」

「…帝都から少し離れた森の中だけど」


そう返せば安堵したように息をはく青年。だが、ん?と小さく声を漏らした。


「なんか…熱かった」

「あーそれは、だなつまりその…」


青峰がたどたどしく今まであったことを説明すれば、聞きながら上半身を起こした青年は一瞬呆気にとられたような表情をしていたが、笑いだした。


「っハハハ、走ってきた人に当てるとか逆に才能やん」

「うるせっ、でもその…悪ぃ」

「でもちゃんと治療してくれたんやろ?」

「あーまあ、コイツがな」


コイツと言って青年が寝ていたベッドに身体を預けて寝ている高尾の頭をそっと撫でた。


「…コイツは高尾和成っていうんだ。カズって呼んでる」

「カズ、…か」

「で、オレは青峰大輝、アンタは?」


そう訪ねると青年はきょとんとした後、少し困ったように笑ってから口を開いた。



「たぶん今吉翔一や、よろしゅう」



多分って何だよ、とは聞けずよろしくな、と青峰は返した。
そうすれば、困ったような笑顔からどこか優しげな笑顔に変わる。
青峰がその表情に、どきりとしたのは自分自身でさえ気がついていなかった。




『あの人、身体、治療したとき、火傷、違う傷、たくさん、あった』

『火傷と違う傷がたくさんあった?』

『うん、切り傷、あと、たくさん、塗った跡、が』



夕食中の会話を思い出し、目の前で高尾の髪を弄ぶ今吉となのる青年をみた。


彼は一体、何者なのだろうか。




その答えがわかるのは、遠くない話。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ