黒子のバスケ

□愛は切なさに溶けて
1ページ/3ページ



霧崎第一男子バスケ部の女子マネは多い。
それはたぶん、だいたいが花宮を目的な女達だ。

誰もがレギュラーとお近づきになりたい、まあそんな感じに思っているのだろう。
そんな黒い感情が飛び交う中、レギュラーに気に入られているマネが一人。


それが二年の古橋。




「ああーだるいな…」

「練習後はいつも…って瀬戸!寝んな!」

「でも眠いし」


原、山崎が居残りで練習をし、瀬戸を起こして部室からとしたとき。


「あだっ!!」


扉を開けた原が勢いのある何かにぶつかった。
声をあげながら自分の胸埋もれている物体をみれば、長い前髪の下で目を見開く。


「え?古橋?」

「どうしたんだよその髪!」


そこにいたのは古橋。原に続いて山崎も声をあげる。瀬戸にいたはアイマスクを外した。


だがなによりも古橋の長い髪はいつもより短くなっていた。


「あ、悪い……っ」

「ちょ、古橋!!?どっか打ったの?痛かった!?」


原の顔をみれば不自然に古橋は笑った。
だが耐えきれなかったようで表情を崩した、そして古橋の瞳に涙がたまっていく。
それをみた原はあわあわと古橋をいたわる。


「古橋、何かあったんだろう?」

「せ…とっ…、ぅ…ふぇ…っ」


そんな原を押し退けて瀬戸が古橋の頭を優しい手付きで撫でた。
その行動にぼろぼろと涙をこぼし始めた古橋、瀬戸はそっと抱き寄せてその背中を優しくさする。


「…古橋、お前の家はここから近いだろ?そこで話を聞いてもいいか?」


瀬戸の声は聞いたことのないくらい優しい。
その言葉に頷いた古橋は瀬戸の胸に顔を埋める。


「原、山崎、お前等もきてくれ」


瀬戸が言えば山崎は素直にわかったと返し、押し退けられた原はむすっとしながらも頷いた。







「親はいないから…」


自分の部屋に三人を通した古橋は控えめに笑う。
女子の部屋が珍しいのか原と山崎はそわそわしていた。


「古橋、話を聞いてもいいか?」

「ああ、…これ」


まだ目元が赤い古橋が見せたものに古橋は目を見張る。
それはボロボロに壊れたペンダントだった。


「これ…」

「古橋、これは花宮がお前にあげたやつじゃ…」


瀬戸が訪ねれば少し涙目になった古橋が頷く。
そして震える声で話始めた。




古橋は、バスケ部の女子マネからよく嫌がらせを受けていた。
理由はレギュラーに気に入られていること、

花宮と付き合っていること。



最初は些細なことだったが、今では三年や一年までもが嫌がらせに加わりエスカレートしていた。
教科書が破られたり、靴がなかったり、罵倒されたりと様々なもの。

けれど古橋は気にしないようにしていた。
というか性格上気にしないタイプだったのだ。


それが、女子マネ達のいやがらせに油を注ぐ。



そして今日の放課後にそれはおこった。




『古橋…アンタ花宮くんと付き合ってんだろ?』

『でもさ、嫌われてんじゃないの?貴方に優しくしたところ見たこと無いし』

さすがに少し腹がたった古橋はそんなことはないと否定して睨みつけた。
そうすれば、クスクスと笑われる。


『じゃあさ、嫌われちゃえば?』

『…は?』


古橋が声をあげれば長い髪を掴まれた。
そしてハサミをもった女が近づいてくる。


『や、めてっ……い…いや…っ!!』


これから何をされるのかを悟った古橋は抵抗するが、後輩の女子マネに押さえつけられる。



やめて、きらないで


花宮が綺麗だって言ってくれた髪


触って、優しくキスしてくれた髪



やめてやめてやめてやめてっ!!



『ぶっ…あはははは!!この位でいいね!あんまり切ると花宮くんにバレちゃうし』


床に散らばった髪。
古橋は壁に叩きつけられた。


だが、



『あとーこれ、壊しちゃうね』


そういった女は古橋の首にかかっていたペンダントを引っ張ってチェーンを切れば、それを床に叩きつけた。


『…っ』


そしてそれを、思い切り踏みつけた。
延ばした手が、届く前に。



女子マネたちの笑い声や哀れむ声。
古橋は壊れたペンダントを手にその場を走り去った。


next→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ