黒子のバスケ

□寂しがりなのは君と僕
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たとえば、そう。



好きな人と付き合っていても、


相手の気持ちがわかるわけではなくて。


人より、心情を読みとるのが
得意だったとしても



好きな奴の心なんか、怖くてのぞけやしない。








「りょーう、弁当よこせー」

「あ…青峰サンの分も作ってきたんでよかったら…」

「おっマジかよ!!気が効くじゃねーか!!」


たとえば、そう。

こんなとき。


今吉は青峰と付き合っている。
けれど学年は違くて、部活にも顔を出さない。
会う時間なんて、日常では部活後と昼くらい。
だから、一緒にいたいと思って昼は共に食べる約束をしていたのに。


「良、一緒に食べんぞ」


だけど青峰は、そんな約束、ワシにとってはすごく大切な約束を、簡単に破る。

桜井と青峰をみて思わずその場を去った。
胸の奥が変に痛い。

女々しい自分が、嫌。



「青峰は…ワシのこと好きやないんかな…」


一人、呟いた。



桃井ともああしていて仲が良い。

若松とも喧嘩してばかりだがお互いよく絡む。

桜井は言わなくても仲がいい。

黒子のことはよく気にする。
携帯をいじって、ため息をついていることもある。
きっと来るはずのない黒子からのメールを待っているんだ。


じゃあ自分は?


何も、何にも


「あらへんなぁ……」


悲しかったけど、泣くことはない。
こんなの自分らしくなさすぎて。







「主将!!」


休み時間、廊下を歩いていればでかい声。振り返れば、若松が走りよってきた。


「若松、どしたん?」

「あっ…いやえっとっすね…監督が呼んでたんすよ!!」

「わかった。せや若松…青峰見いひん?」


「青峰ならさっき、桜井と一緒に屋上に向かうの見ましたよ」


ずきり、漫画みたいに胸が痛んだ。
痛くて、息ができないくらい、笑えないくらい、

得意の嘘もつけないくらい。


「…主将?」

「…ああ、わかった…じゃ、行くわ」

「主将っ!!」


顔をあげられなくて、その場を去ろうとした。けれど若松に腕をつかまれる。


「よく…わかんねぇけど………無理、しないでください」


若松の言葉に、涙がでそうになった。
けれど、振り返って若松の高い位置にある頭を撫で、礼をいった。
そうすれば若松は笑って、教室に戻っていった。





『屋上、いかね?』

『…なんで?』

『アンタだけに見せたい景色があるから』


『夕焼け。すげぇと思わね?』

『…せやな』


『オレが屋上に連れてくるのは、アンタだけだから』



そう言って笑った青峰は、もういない。


嘘つき。


約束、破りすぎだ。




「アイツ…ワシなんかより、よっぽど嘘つきやんか」





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