Fallen spirit

□第三話 -旅-
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「カズー置いてくぞー?」


遠くから青峰の声。
高尾は家の側の小さな花畑にきていた。


そこには白い石が建っている。


高尾を育ててくれた大切な親代わりの墓。



「オレ、しばらく、ここ、いない、ごめん」


風が高尾の髪を揺らした。


「二人が幸せになる旅、に、なればいいな」


そう言えば笑う。
昨日から考えていた言葉はスラスラと口をついてでた。



どうか幸せへ向かう旅でありますように。


その祈りは、叶わないけれど。






「この辺は魔物多いからな、気を付け…」

「魔物ってアレのことやろ?」


目的地に向けて歩を進めていた三人であったが目の前に現れたのは花の形容をした大きめの魔物。
青峰は舌打ちをして大剣を取り出す、高尾も大きな爪のような武器を付けた拳を前につきだした。


青峰が剣を降りあげて地を蹴る。


「弧月閃ッ!!」


青峰が魔物にダメージを与えている間に、高尾が魔物の懐に入り込む。


「幻竜拳っ」


何をしようとしたわけではなかった。
ただ、なんとなく、自分も役にたちたいと思っただけ。


『血を喰らえ花よ…フィオーレクレミージ』


今吉の口から発せられたのは、自分も知らない詠唱。
魔物を紅い花の幻が包み、花弁が開いたときには魔物は既に瀕死状態になっていた。
それを青峰が切りつけ魔物を倒した。


「っ今吉サン!!今の術なんだ!?」

「ワシにも…わからん…」

「すごい、威力、だった」


青峰と高尾が駆け寄ってきて笑った。
よくわからなかったけれど、自分が二人と共に戦えるのならそれでいい。
今吉はつられて笑った。






「宿屋は無理やで」


小さな街についた頃には、もう日は落ち始めていた。
宿をとらなくてはならないが、今吉が無理だ、と繰り返した。


「ワシは軍に追われとる、君らだけで泊まったほうが…」

「ばーか、三人で野宿だろーが」


青峰の言葉に顔をあげようとすれば、頭をぐりぐりと撫で回される。


「っけど」


「オラ、行くぞ」



青峰が無邪気に笑うから、今吉は差し伸べられた手を握るしかなかった。




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