Fallen spirit

□第二話 -苦-
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あれから数日。
顔色の悪かった今吉は少しずつ回復しているようにみえた。


そんな幸せだった、朝のこと。


ードンドンドンッ…


朝から扉を叩く音。
その日休みだった青峰は頭をかきながら不機嫌そうに扉を開く。
その後ろから朝食を作っていた高尾がひょこりと顔を出す。


「朝からなんのようだよ」


扉の前にいたのは帝都アイリスのアイリス軍人。


「帝都アイリス軍第一軍だ、No.8を見かけなかったか」

「ナンバーエイト?」


軍人の言葉に高尾が首を傾げて聞き返す。
青峰はどうしてか、この家に居候している一人の青年を思い浮かべた。
そしてそれは確信に変わる。


「ああ、変わった話し方をする、ボサボサ黒髪の青年だ」

「…そいつが、なんなんだ?」


コイツ等に今吉を渡しては絶対だめだ、絶対に。
そう青峰は直感した。


「言う必要はない国家機密だ」

「ソイツ、知ってる。だからなんでもいい教えろ」

「…奴は人間だが人間でない、美しくもあり汚れている…曖昧な存在だ」

「それ、見つけて、どうする?」


高尾の言葉がわからなかったのか黙る軍人に青峰が「そいつを見つけてどうする気だ」と訳すように言えば軍人は躊躇うように少し間をおいてから、口を開いた。


「利用する、実験台として…と私は聞いている」

「だれからだ」

「帝都アイリス軍事実験総指揮、花宮真様からだ」

「そうかよ…そのナンバーなんとかは、ここを通って東にいったよ」

「そうか、協力感謝する」



扉の閉まる音が、やけに低く重く感じた。







「アレはどこへ行ったんだ」

「ボクにも気配が掴めません」

「というか黒子君、君、忘れてないよね」

「…はい、ボクは影の精霊シャドウの器です」


黒子は薄く笑った。


「貴方は、氷の精霊セルシウスの器でしょう?氷室さん。」


そして黒子は今まで黙っていた一人を振り返って笑う。
そうすれば彼は顔を歪めた。



「ねぇ…?風精霊シルフの器、緑間くん」



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