Fallen spirit

□第一話
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暗い暗い研究所、このままここにいればかならず自分は殺される。

逃げなければ。
生き延びなければならない。
このまま死ぬのは嫌だ。

会いたい、貴方に会いたい。



「No.8、今日から一週間私たち貴様の実験をする、ありがたく思え」


重く鈍い音とともに開いた鉄の扉。そこから覗くのは、中年の男。


「い…や、や…ワシは…人間やでっ!!」

「…ハッ、…笑わせるなよ、誰が?」


ニヤリと笑った男は、じゃあなと扉を閉めようとする。


「っ…フォトン!」

「なっ…うあああああッ!!」


見事命中した術のせいで吹っ飛んだ男は意識を失ったようだ。
だがこのままでは誰かがきてしまう、その前に早く脱出しなければ。


彼は走り出した。


死にたくない、ただそれだけを強く願いながら。







「カズ、行ってくるわ」

「いってらっしゃい、青君」


あー天気が良いな、と欠伸をしながら森へ向かう青峰。
桃井が売るための素材を手に入れる、それが青峰の仕事だった。
普通の仕事はしない。なぜなら青峰は、街から外れた森にひっそりとたっている家に住んでいるからである。


「って、今日はウルフだったよなぁ…」


青峰は一人呟く。その視線の先にはこちらを警戒して唸るウルフの群。


「こりゃ、剣だけでいくと噛まれそうだわ」


ふぅ、とため息をつくもやらないわけにもいかない。
自分のため、そして一緒に住む獣に育てられた少年、高尾のためにも。


『雷雲よ我に力を、ライトニング!』


小さな雷が落ち、何匹か倒したようだ。だが、攻撃してくるとわかったウルフ達は青峰へと一斉に飛びかかってきた。


『あーもう…やっぱ生真面目な術は合わねえわ…っとアイシクル!』


詠唱なしで降り注ぐ氷の粒。また何匹か倒したようで数は少なくなっていた。


『今日は剣使えなかったな…つまんねーの』


そう言えば、最後だというように今までよりも多めにマナを集める。


『その辺にある炎の力、とりあえず集まっとけ!ファイアボール!』


詠唱が詠唱じゃないのに術が使える、それが青峰の特技でもあった。
だが彼の本職は大剣使いである。


「おっ全滅したな!!」


そう言って辺りを見回したとき、青峰のよくわからない詠唱の所為かはわからないが一つだけ命中しなかった火の球が、


「っ!!!危ねぇよけろ!!」

「はぁっ、は、っ……え?」


青峰の叫びもむなしく、何処からか走ってきた青年にぶつかった。





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