短編&ふざけた話

□母の日〜音也の場合〜
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 『音也!!』

音「何〜?名前」





今日は母の日。


お母さんに感謝を伝える日!





 『今日のスケジュールは空いてますか?』

音「はい、空いてます!」



 『では…デート!


  と行きたいところだけども』


音「行かないの?」


 『うん、他に行くべき所があるもん』







せっかくの休みだとしても
今日は、今日だけはデートも我慢!







まずは音也の手を引いて花屋さんに。



母の日だからと所狭しと並べられたカーネーション。



 『ここのカーネーションぜーーーんぶ下さい!』



店「えっ?!か、かしこまりました!」


突然のキチガイ発言に動じながらも
急ぎ足でカーネーションを集めてくれる店員さん。






音「えっ?!急にどうしたの?」


 『良いから!あ、支払いはこれで』





両手に抱えきれないほどになった花束。






音「ほら、貸して?」

 『いいよ、音也!重いし…』

音「重いんだったら尚更だよ?
  ほら、無理しちゃ駄目だし、ね?」



 『ありがとう、音也!』





そのまま電車に乗って―――。


着いた場所は。




















音「ここって…」







 『音也のお母さんがいる場所』


音也の手をとってお墓の前に行く。






 『お花、新しいね。
  誰かが来てくれたのかな』


一輪の向日葵。

この時期って珍しい気もするけど…。



持ってきた真新しいタオルでお墓を丁寧に拭う。




綺麗になったら向日葵にたっぷり水を足す。



 『音也、お花ちょうだい!』


ひしゃくを置いて音也から
カーネーションを受け取る。




 『…買いすぎた』

どうしても、入らない。。。



 『あ、いい事考えた』

カーネーションを丁寧に編む。



数分後――――。


 『出来た!!!』



我ながらかなり上手に出来たと思われる花の冠が完成した。







それをかぶせたかったけど…。



 『届かぬ…』



どれだけ背伸びしても届かない。







何なんだ、私の身長!!!










そんな時後ろからすっと手が伸びてきて
花冠をちょこんとのせてくれた。


 『ありがとう、音也』






ニコッと笑ってそう言うと
音也はさびしそうに笑った。



綺麗になったお墓。









お線香をちょこんと2本差して並んで手を合わせる。





 『音也のお母さんへっ!!』

隣でギョッとする音也。



 『音也は太陽みたいに輝くアイドルで、
  …素敵な自慢の私の彼氏です!

  そんな素敵な音也の周りには
  たくさんの素敵な仲間がいます。

  今までずっと私は音也に助けられてきました。

  そんな音也を生んでくれて…
  音也と音楽を出会わせてくれて……


  ありがとうございましたっ!!!!』



そう叫ぶと目の前が真っ暗になった。


触り心地のいいシャツが指に触れる。






見上げると音也の顔がすぐそばにあった。








 『おと、や?』

音「ん…」



音也は泣いていた。

大きな瞳からもっと大きな涙がこぼれ出す。





 『音也、泣かないで』



 『お母さん、喜んでくれたかな?』

音「…うん」




 『じゃあ、歌おうか』

音「え?」

 『え?歌わないの?』



 『即興ソング希望!』

音「えっ?!どうしようかな…」




少し考えた後で大きく息を吸う。












―ありがとう―

その歌詞が何度も出てくる歌だった。






聴き終わると心が温かくなるような、
音也らしいまっすぐな曲。






音「母さんにさ…届いたかな?

  俺の気持ち。




  音楽やっててすげー楽しいとか
  生んでくれてありがとうとか






  一生大事にしたい女の子を見つけたって事とか」


 『っ…うん!!!』










音也のお母さん。





貴方の息子はこんなにも素敵です。

私がもらっちゃいますから!!!!





未来のお母さんとして見守ってくれると
嬉しいなぁ、なんて。







音「名前ー?帰るよー」

 『うん!!!』






優しい風が吹いてまるで音也のお母さんが
祝福してくれているような、
そんな気がした母の日。

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