俺のはなし。
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「東京からきました湯野川水蘭です!よろしくお願いします!」
聞き心地のいいソプラノボイスが立海大学附属中学校の3Bの教室に響いた。
転校生を前に男子は一部を除き頬を染めながらざわめき、女子はみな恍惚としていた。
そう、転校生は世間一般でいう美少女という部類に属していたのだ。
「はい、みんな仲良くするように。では湯野川の席は窓側の一番後ろだ。」
「あっ(…俺の後ろの席じゃん。)」
先程まで転校生に興味をしめさずガムを噛んでいた丸井はふと顔をあげた。
「(っつーことは転校生仁王の隣か、かっわいそー)」
丸井は、仁王の隣になったときの悪夢…ひどいイタズラの数々を思い出しながら転校生に同情した。
そんなことを考えているうちに、転校生は席について、丸井の方をじっと見つめていた。
「(…一応挨拶しとくべきだよな)俺、丸井ブン太、シクヨロ!」
「…うん!よろしくね!」
「おう!(あれ?一瞬睨まれた気が…)」
少し気になった丸井だがすぐに授業のチャイムがなってしまった為、あまり深く考えないようにした。
しかし、後に丸井はこの時気づいていれば…と後悔することになるのだが、今の丸井に知る由もない。
その後の転校生は凄かった。
なんと、あの仁王を手なづけ、その仁王の推薦によりテニス部のマネージャーになったのである。
「(別にそれはいいんだけどよ…。)」
「水蘭はほんとに可愛いね!」
「ふぇ?そんなことないよ?精市ったら冗談が上手だね!」
「いやいや!ほんとに可愛いっすよ!水蘭先輩!」
「あっ赤也までなにいってるの?」
「(…ちょっと練習がおざなりじゃね?)」
丸井はそう思いながらため息をつき、基礎練を始めた。その姿を転校生がじっと見ているのを知らずに…。
練習もほどほどに今日の部活は終わり、丸井は物足りなさを感じながら、帰りにどこかで練習をしようかと考え、帰路についていた。
「ブンちゃん!今ちょっといいかな?」
「…おう!いいぜ。」
転校生の呼び出しに、正直早く帰って練習したいと思いつつも、丸井は笑顔で応えた。
「で、どうかしたか?」
「うん!あのね、ブンちゃんってさ、皆に愛されているよね!」
「そっかぁ?(そんなことのために呼び止めたのか?)」
「そうだよー!
だからほんとにすっごいウザいの!」
「…は?」
急になにいってるんだこいつと思いながら転校生を見る。そんな丸井に構うことなく転校生は笑顔で続けた。
「ホントなんなの?みんなしてブンちゃんに気をかけたりしてさ、何なんだろうねまったく、わたしのほうがうーんと可愛いのに!
それでも私のことみんなと同じように可愛がってくれるならなーんにも気にしなかったのにさ!
ブンちゃんって、前から思ってたけど本当に邪魔だよ?」
「…。」
あきれた、なにいってんだこいつ。多分頭がおかしい系の残念な美少女だ。
関わって良いこと無し。と思い、丸井は踵をかえした。
「…だからさ、」
先程と雰囲気が変わったのに気づき丸井はバッと転校生に向き直す。
ビシャッ
そう音が響いたかと思うと、転校生は自らスポーツドリンクをかぶり、服を乱していった。
「…なにして、」
「ブンちゃん、わたしの為に利用されてね?」
きゃーっ!
戸惑った丸井に待ち受けているのは、仲間からの裏切りと悪魔のような顔をして笑う醜い女の顔だった。
ーーー
時系列が不明ですが、3Bに転校生が来てマネージャーになり、その後都大会を終えて幸村が帰ってきた辺りです(多分)