オリジナルBL小説

□reunion4
1ページ/1ページ

朝、僕は電車に乗りながら昨日のことを思い出していた。
今、思うとあの瞬間はまるで夢のようにさえ思うのだ。
僕は、夢の中で椎名に会って会話をする・・・。という、夢を見ているに違いない。

そう考えている内に、本当に夢の中に入ってしまったのだ。


僕を呼ぶ声がする・・・。
その声はとても心地よくて再び目をとじる。
すると、耳元でまた呼ばれた。
僕は、目をあけて部屋を見渡す。
確か電車に乗っていたはずだが…
誰かの部屋で僕は寝ているらしい
すると、部屋のドアが開いた。
その人は僕の知っている人で…

「あっ…!よかった、…目が覚めて」
微笑み、ホッとしたような様子だった。
けれど、僕の目は何故かボヤけて見える。
目をこすって、何度か瞬きをするとピントが合った。
「あ、あれ…?…椎名?」

どうして、椎名が?
どうして?
「成田、ここは俺の家だから」
椎名の家?

僕は、はっとする。

「あ…!ご、ごめん。すぐにどくから… !」
起きる瞬間、くらぁ…とめまいが起きた。
「ゔっ…」
ずっと、寝ていたせいで思うように体が動かない。
すると、椎名が体を支えてくれた。
「成田… 大丈夫?」
「ありがとう… 椎名」
素直にお礼を言うと、椎名が額に手をやった。
「!!っ…椎名?」
僕はビックリしていつもより声を大きくする。
「熱はないかな… でも、顔は少し熱いね…?」
今度は、顔に触れてきた。
触れてきた部分がじわじわと熱くなってくる。
しまいには、心臓がドクンドクンと鳴ってしまう。
顔も近いからどこに目線を移したらいいのか分からなくなり下を向いているしかなかった。
そんな僕をどう思ったかなんて知らないけれど、椎名は僕を抱き寄せた。
「…!」
ビックリして声が出なかった。
「成田… 大丈夫だよ。俺がついているから」
まるで、子供をあやすように優しい声で囁いた。
その声がとても心地よくて、安心した。


1分くらい、そうしていたのかもしれない。
僕は、目を閉じて椎名の鼓動を聞いていた。
リズムよく、トク・トクと鳴る。

すると、椎名が突然話しかけてきた。

「成田… どう? 少しは落ち着いたかな?」
椎名が優しい声色で聞いてきた。
「う、うん。…大丈夫だよ。ありがとうね、椎名」
僕はそう言って笑って見せた。
「それにしても、電車の中であれだけ寝て、ここでも寝て…。
寝不足なの?」
今度は心配そうな声色で言った。
「えっ…電車の中でって… もしかして椎名が駅からここまで連れてきてくれたの?!」
僕は、驚いて声を大きくした。

椎名は頷いて…
「うん。俺、たまたま電車に乗っていて降りようとしたら成田の姿が見えたんだ。 でも、なんだか顔色が悪かったしほっとけなくて… 家まで連れてきちゃったんだ…」
「そ、そうだったんだ。 ごめん…
迷惑かけて…」
僕は、頭を下げて謝った。

突然、頭を引き寄せられ少し苦しいくらいに抱きしめられた。

「…っ! 椎…名?!」

「ごめん。でも、こうしないとどこか遠くに言ってしまいそうな気がして… 」
椎名は、少し震えていていた。
微かに声も涙ぐんでいるような感じがする。

僕は椎名に腕を回そうとしたけれど、回すのを止めた。
2年前に実りのない恋心に終止符を打った。
その思い人が今まさに目の前にいる。

どうして抱きしめられているのか分からない。

どうして震えているのか。

どうして泣きそうな声をしているのか。


どうして僕を『ほっとけない』と言って家まで連れてきてくれたのか


その理由を聞かせて。







「えっと、椎名。今日はありがとう」
椎名の住んでいる町の駅に案内してもらい気づけばもう、夕方になっていた。
「成田、本当に大丈夫?送っていかなくて」
心配そうに僕を見つめた。
僕より背の高い椎名は、のぞき込むように問いかける。
「大丈夫だよ。ただの寝不足だったんだ。寝たらとてもスッキリしたんだよ。ありがとうね」
「そう… 」
静かに微笑んでいて
まだ、何か言いたそうな顔をしていたけれどあえて、それを聞くのをやめた。
そして、椎名が僕の頬に触れてきて
「顔色良くなってるから大丈夫だね」
そう、言うと椎名は手を離した。
「うん」
…なんだか、触れられた部分が冷めない…
逆に熱く感じている…

なんなんだろう… この気持ちは…

ふと、時計を見ると電車の発車時刻が10分前くらいに迫っていた。

「あっ…!もうすぐ時間だ。そろそろ行くよ」
「え、もうそんな時間?」
「…うん、 椎名!今日は、いろいろと迷惑かけてごめんね!!
…本当にありがとう」

僕は歩きながら振り返り「バイバイ」と手を振った。
椎名も手を振ってくれた。

見えなくなったのを確認して、
僕は歩く。
頬の熱が冷めるように、冷めるように… と、願いながら駅のホームまで歩き続けた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ