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□寂しい人
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十年後設定 ルッスーリア視線




幹部用の談話室に入って、ふとソファに横たわる青年の姿にルッスーリアは息を飲んだ。
誰もいないと思っていたから驚いたというのもあるが、自分が「誰もいないと思っていた」ことに愕然としたからである。
暗殺部隊の幹部をしているからには、人の気配には敏感であるという自負があった。むしろ無くてはやっていけないのだがその自分が気付けなかった、見るまでその存在が分からなかったことが怖くなる。
青年はおそらくルッスーリアと同じ幹部の一人であるスクアーロを待っていたのだろう。
でなければ彼は忙しいらしい。
横たわる青年はルッスーリアが近付いても身動ぎ一つしなかった。それどころか呼吸で胸が上下する様子も無く、まるで死んでいる様だ。
自分好みの身体を死体にしてコレクションする趣味のあるルッスーリアにとって死体は身近なモノ。それらと比べても横たわる青年の見た目は変わらない。
ルッスーリアはそっと青年の腹部に置かれた手に触れる。嫌な予感がしたのだ。
触れて軽く持ち上げた手は力ないうえにヒンヤリと冷たく、体温が感じられない。
驚いて慌てて口許に手をかざして呼吸を確認する。不思議な事に掌へ息が当たる感覚は無い。
最後に胸元へ手を押し当てて心臓の拍動を確かめる。
動いていた。
通常の拍動より遥かに弱く回数も少ないが確かに動いている。
それから死んでいるのではなく眠っているのだと分かり、ルッスーリアはため息を吐いて手を放した。
死んだ様に眠るという表現そのままな眠り方をする青年の顔を覗き込む。青年はまだ起きない。

ルッスーリアは彼の事をいまいち良く知らなかった。

ある日いきなり現れ叫んで消えてまた現れ、一般人からいきなり裏社会の重要人物になったかと思えば、時々ボンゴレに現れては笑って話をして去って行く。
前世の記憶を持っているとか信憑性のない話は他の人伝で聞いた事があるが、今のところ彼はルッスーリアの中ではまだ「それなりに親しい青年」だ。
おそらくきっと、そういう事を青年の方も話すつもりは無いだろう。話すつもりならとっくに話している。話せないからわざとボンゴレに所属しない。
そんな気がした。




「……寂しい人ね」






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