イブリスの仮面

□ペルソナ4
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ここにいる影はこの空間の霧が晴れる時以外は普通の人間は襲わないとクマのお墨付きをもらって、ようやく里中が一時撤退を受け入れた。
次にいつ晴れるのか分かっていないのにその保証を受け入れるのもどうかとは思ったが、どうあれ天城が無事なのは分かっているのでアマネは何も言わない。それに天城がまだ数日は無事だろう事もアマネは分かっているのだ。

「……さっきは、ごめんね。一人で、勝手に突っ走っちゃって……」
「気にしてねえよ。天城は必ずオレたちで助ける。……だろ?」

元の場所へ戻る道すがら、里中が鳴上達に先走ったことを謝罪する。
別に先走ってしまったとしても弁解が出来るのならいいのだ。問題は出来なかった時のことで、そうなれば反省も謝罪も出来やしない。
霧の煙る通路を鳴上と花村の先導で戻る。クマはアマネが渡した槍を持ったままだからか、アマネの傍をつかず離れず歩いていた。歩く度に音がするのが気になるが、どうせそのうち慣れるだろう。

「……あの、さ」
「ん?」

横抱きに抱えて運んでいた里中がアマネの腕の中で呟く。

「斑鳩君も、迷惑かけて、ごめん」
「迷惑?」
「さっきのシャドウに襲われた時とか」
「あー……別に迷惑じゃねぇよ」

前方で花村が鳴上に話しかけていた。隣からポテポテと足音が響く。

「里中さんが天城さんを好きなのは見て分かる。でも好きだからって相手の全部を受け入れる必要も、好きだからって相手を見下さずにいられるかってのも、結局それは別の話だろぉ」
「……そう、なのかな」
「俺だって白蘭の事時々凄く『どうしようもねぇなぁコイツ』って思うもん」

例えば『世界征服したい』なんて言い出した時とかに。もしくは『部屋いっぱいのマシマロ食べたい』なんて言い出した時もだ。
世界征服してその後はどうするんだとか、部屋いっぱいのマシュマロを誰が作ってどこに保存しておくんだとか、呆れた言い返ししかアマネには思い付かないから尚更だ。

「大切な人の為に必死になれるのは、決して悪ぃ事じゃねぇよ」
「……うん」

ぎゅ、と服を握られる。それを茶化さずに進んでいれば、最初にこの空間へ来た時の場所へと到着した。
人の姿がいくつも線で表されている地面。そこで里中を降ろせば彼女はふらつきながらも自力で立った。

「なんか、この前より疲れた」
「あ、そっか。お前らメガネしてないな」

ここに来てようやく思い出したとばかりに花村が言う。アマネも眼鏡をしていないので視界は朧気だったが、里中のように疲れてはいない。
そこは慣れだ。





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