イブリスの仮面

□ペルソナ4
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里中が無意識に忌避していた内面は、天城に対する劣等感と女性らしさのない自分。天城という認めてくれ存在がいなければ何も出来ず、何も評価されることがないという思い込みともいうべきか。
里中も里中で可愛いとはアマネも思う。けれども天城にはそれに上乗せされた女性らしさがあった。その上乗せされた部分が、里中は羨ましくて仕方がないと思うようになっていたのだろう。
だから天城が好きで、少しだけ嫌いだった。

「アンタなんか、あたしじゃない!」

泣き入りそうな震える声での拒絶。花村が止めようとしたが無理だったそれに、里中のシャドウがうっそりと笑いその姿を変貌させた。
人を踏みつけるシャドウの姿は、里中の中にあった『天城を下に見ることで安寧を得る』という無意識からだろう。アマネが知っている里中のペルソナはそんなことをしていなかった。
当たり前だ。『彼女』はアマネと出会う前に、これを乗り越えていたのだから。
とりあえず『今』のアマネとしては初戦となる対シャドウ戦に、アマネは持っていた槍を一回転させた。

「あれ、倒していいんだろぉ?」
「ああ!」

力強い声と同時に、鳴上が隣で刀を構える。花村はまだ気が動転しているようだったが、それでもすぐにクナイを構えていた。クマはまだ戦力として加わってはいないので、里中のシャドウに襲われないようにジリジリと後ずさっていく。
尻餅を突いた里中の脇を駆け抜け、振り下ろされたシャドウの攻撃を受け止めた。ギチギチとなる刃鳴りにシャドウを見上げ、払うようにして受け流す。
受け流されたことで隙の生まれたシャドウに鳴上と花村が突っ込んでいった。勇気だけはあるがまだまだ無駄の多すぎる動きをいっそ清々しく眺めて、アマネはへたり込んでいた里中の腕を掴んで立たせる。

「里中」
「いや、いや……」
「里中!」

短く怒鳴りつければ里中が肩を震わせてからゆっくりとアマネを見た。

「――俺はまだ、君のことを殆ど知らねぇ」

年頃の柔らかい二の腕。

「でも、君が天城さんを好きで友達やってることくらいは分かる。でも友達なんて――自分と違うからいいモンだろぉ?」

瞬き一つ。
アマネが支えずとも自力で立っていられるようだと判断し、アマネは里中の腕を離してシャドウに攻撃を繰り返す鳴上達の元へ向かう。
振り下ろされた腕を一本花村が受け止め、逆の腕がそれを払おうと動く前にアマネは槍を突き差した。動く事の出来なくなったシャドウに鳴上が刀を振り上げる。





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