イブリスの仮面

□ペルソナ4
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それなのに昨日の今日でまたジュネスの家電売り場へ来てしまったのは、生来の性格からかもしれない。


無責任に行動しても意味がないとは二年前、真剣に考えた筈なのに。


誰にでもなく謝って昨日のテレビの前へと行けば、何故かロープを握り締めて座り込み俯いている女生徒がいる。それが昨日テレビに飲み込まれた子の一人だと気付いて、すぐ横でしゃがんだ。

「……どうしたんだぁ?」
「……」

だんまり。咽喉まで出掛かった溜め息よりも先に、自分が不審者であるからかと気付いて立ち上がった。ふと視線を向けたテレビには電気がまず通っていないのか何も映っていない。
もしや一人だけ帰ってきてしまって、昨日一緒に居た二人は帰ってこなくて悲しんでいるのか。もしそうなら助けに行った方が良いだろう。テレビから人を出す方法なんて知らないぞと思っていれば、ぬ、と真っ黒な画面から手が飛び出してきた。
続いて腕、脚、身体と繋がって現れ、やがて昨日見た二人の全身が現れる。二人は出てきた途端俺が居ることに気付いて、ヘッドホンを首に掛けている方はあからさまに挙動不審に、俺を見ていた。
けれども特に怪我をしている訳でもない。なら何も問題はなかったので隣で俯いている女生徒の肩を出来るだけ優しく叩く。

「ホラ、帰ってきたみたいだぜぇ」

顔を上げた女生徒が涙ぐんで怒鳴るのを見て踵を返す。あのテレビには異空間にでも繋がる何かがあり、昨日の三人組が飲み込まれたのは見間違いではなかった、ということが確認出来た。












学校でマヨナカテレビなる噂を聞いて、見てみようと思い深夜日付が変わる瞬間を待つ。
勉強をする気にもなれなかったので、買ったばかりだというのに音が悪く感じるイヤホンをして音楽を聞きながらナイフの手入れをしていると、ふいに電源が切れているはずのテレビが点いて砂嵐を映し出した。


時間は影時間が出たのと同じ、深夜零時ちょうど。


思ったよりはっきりと映る姿は、夕食を食べている時のニュースで見た旅館の娘さんだったと思う。ニュースで見たときとは違うドレス姿と異様なテンションに見ているこちらの空いた口が塞がらない。
テレビへ手を伸ばすと指先がテレビの画面にぶつかることなくすり抜けていく。
ジュネスのテレビでなくとも入れるらしいということは分かったが、何処に繋がっているのか分からない現状。何かするにもとりあえず今日は寝て、行動は明日にすることにした。






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