イブリスの仮面
□ペルソナ4
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「じゃんじゃじゃーん! チエチャンにも用意してあるクマ!」
そう言ってクマが里中へ眼鏡を渡す。
「ザンネンクマけど、アマネの分はまた今度クマ」
「ん、俺にもくれるのかぁ?」
「クマは親切なクマですクマから!」
「ありがとう」
「ふふんクマ!」
『前』でも貰った眼鏡を思い出して、胸を張るクマの頭を撫でる。持ち越すことの出来なかった贈り物は何も知らない相手からもう一度貰う事になるようだ。
受け取った眼鏡を掛けた里中がクリアになった視界に驚きの声を上げる。
眼鏡を掛けることではっきりと見える世界。ふとその世界は本当に“正しい世界”なのだろうかと考えて、自分の本来の目的を思い出した。
“真実に到達させる”事の“真実”は、そんなレンズ越しで本当に見えるものなのだろうか。
そう考えてしまうと少しばかり不安になって、アマネは気付かれないように眼鏡を掛けている鳴上を見た。花村と里中の言い合いを眺めている鳴上は、『月森』がかつてそうだったように殆ど表情を浮かべていない。
『卒業式の日』に泣いた後輩を思い出した。
「――斑鳩? どうした?」
「ん、んん。何でもねぇよ」
ずっと見ていたことで気付いたらしい鳴上が振り返る。『月森』とは違うのだと再認識して、花村の話に耳を傾けた。
「約束だ。オレら全員の約束。『一人では行かないこと』……危険だからな。みんなで力合わせなきゃ、事件解決どころか天城だって無事に助けられない……だろ?」
「そうだな」
鳴上が同意する横でアマネは何も言わない。そんなアマネに四人は気付かなかった。
その約束は“守れない”。
花村が鳴上を見る。
「なぁ、オレ……お前にリーダーやってもらいたいんだけど」
『前』はまだ関わっていなかったから知らない話だが、どうやらここで『鳴上』はリーダーになったらしい。花村の提案だとまでは知らなかった。
「オレはほら、参謀向き? 頭良い人のポジションでさ」
「え、鳴上君がリーダーなのは賛成だけど、花村が参謀は違うでしょ。どっちかって言うと斑鳩君の方が参謀っぽいカンジじゃん」
「えっ、いやオレだって頭いいですけど!? それに斑鳩はまだここに来たの初めてだろ!?」
テレビの中に出入りした回数でポジションを決めるのか。だとすればアマネがリーダーになってしまうのだが、流石にリーダーも参謀も遠慮したかった。
そもそもにしてアマネは今回彼らの敵である。ほぼ一年を通して騙し続けるのに、リーダーや参謀といった立場はどう考えても遠慮したいものがあった。
「俺は鳴上がリーダーで花村が参謀で良いと思うぜぇ。きっとそれが一番良い」