嘘吐き

□under my skin
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気だるい。

なんてね、


何でこんなことやってんのかな?
なんてさ
本当は思ったりしないんだろう。


相手が好きな人でこんな状況じゃなかったらね。












あれは半月前の職場の忘年会。


俺は入社一年目でこの会社では初めての忘年会だった。

周りに気を使ってそろそろ疲れてきた俺は
上司たちがいい感じに酔っ払っているのを確認してから
一息吐きにトイレへ向かった。




その途中悪いことに直属の上司に鉢合わせた。

彼は5年先輩で普段はしっかりもので仕事もできるし
理不尽なことで怒ったりしない良い上司だが酒癖が悪いと噂だった。

面倒なことにはなりたくないので軽く一礼してトイレのドアを押し開けた。


次の瞬間、彼は後ろから強くドアを押し俺を中に押し込むように一緒に入ってきた。


「ちょっと…どうしたんですか…」


洗面台に後ろ手をつき、距離を縮めてくる彼からできるだけ離れようとした。



しかし限界がある。



距離はジリジリと迫り終いにはぐっと顎を捕まれていた。



「ちょっと。
何するつもりですか!?」



「わかんない?キスだよ、キス。」


完全に目が血走っていた。


捕まれた顎は上を向かされ彼の濃厚な唇が重なる。


早く放して欲しいのに唇を割って舌まで入ってくる。

なんとか突きはなそうと肩を押すが、彼の鍛えられた肉体に俺の力は敵わない。


舌がねっとりと口内を舐め回し俺のそれに絡み付く。

驚きと拒絶で泣きそうだった。






もう息ができない、というところで放された。



「…はぁ…、ナニするんですかっ!?」



「何怒ってんの?」

「怒るでしょ、そりゃあ!!」


「はは、
そのわりには気持ち良さそうだったけど?」


「何言ってんすか!?…っ」



腕を捕まれまた唇が押し付けられた。




涙がこぼれた。



「やめてください…」



首筋に息がかかり今にも噛みつかれそうだった。


「そんなに怖いの?

かわいいね。」





あーもう逃げられない、


そう思ったときこちらへ近づく足音がして救われた。






彼のもう一つの噂は白なのか?



東雲さんはゲイらしい。





半月経った今もあの出来事を帳消しにはできなかった。

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