嘘吐き

□take it easy 第4話
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「高校生だったら射程圏内じゃん!」

なんて柏木まで言い出す始末だ。



「あんまりネタにしないでくれる?」


「ネタじゃないですよ!みんな本当に榊さんって可愛いなあって思ってるんですよ!」


「はあ!?
余計きもちわりぃよ!バカ!」


「なんでー?
この間店長に抱きついてt…っ」


酒の勢いで口が過ぎる宮脇を思い切り押し倒してやった。


「ってー…」

「お前、絶対言うなよ。」

耳元で静かに念を押すと

「言っちゃダメな理由って何なの?」

って返された。


自分の中で少なからず禁じ手を打っているような感覚があるから、必死に隠そうとするのだろう。


理由なんか適当に返せばいいのに俺は黙ってしまった。


しばし気まずい空気が流れる。









「おーい、大丈夫?」



柏木の一声で固まった空気が溶ける。



「大丈夫じゃないっすよー。
もう、榊さんいきなり技かけてくるんだもん。
飲み過ぎはよくないですよ!」


宮脇はバシッと俺の背中を叩いた。


「ごめんごめん」
なんて軽くかわしてみるが、俺の笑みは相当不自然だったろう。


「お酒のせいで喧嘩したりしないでよ。
ねえ?」


柏木の視線の先にいる狭山は問い掛けに応じず不思議そうな顔をしている。


「うーん…、

宮脇と榊さんって仲良かったんですね。」

狭山はよく分からん、といった表情を浮かべている。


あの夜の一件から急速に距離を縮めたのだから不思議に思われても仕方ない。



「あー。こないだね、俺んちに2人が来たんだ。
そういえばそれからじゃない?
榊さんとけいちゃん仲良くなったの。」


軽く柏木がその事実を伝えるから、俺ばかりが些細なことを変に意識して捉えてるような気がした。


「別に仲良くはないですよねー?、俺たち。」


「あ、うん、どうなんだろ?」


「だってあの日だって2人で店長の取り合いしてたじゃないですか。」


「は!?」

宮脇がにやりとする。
本当に酒が入るとたちが悪い!


「へー、店長って男にもモテるんすね。」


「えー、別にモテてないよー。
しかも男にモテても嬉しくないし。」


へらっと言うんだよ、そういうことを。

柏木創太という男は。



俺の心はチクリと痛む。


相反して宮脇は
「店長、俺のこと好きって言ってたじゃん!」
と、酒の力を最大限に利用している。




「そういう好きと、なんだろ…愛してる、みたいな好きって違うじゃん。


だからけいちゃんのこと好きなのは嘘じゃないよ。」


それじゃ物足りないとでもいうように
宮脇は不服そうに柏木の腕を掴みぎゅっとした。


柏木は呆れながらも宮脇の頭をぽんぽんしてやった。



宮脇は男も恋愛対象みたいだから、きっとそういう意味で柏木のことを好きなんだろう。


なんとなく負けた気がして溜息が出た。






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