嘘吐き

□take it easy 第2話
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「お前には何も隠せないってこと?」



「隠さなくたっていいじゃん」




頭を撫でられる。



これに弱いんだ。





急に自分がこどもになったみたいに思えて甘えたくなる。


必死に自制心を働かせて態度に出ないよう努めるが結局は同じこと。



頭を撫でながら優しい視線を向けてくるこいつと目があったが最後。




努力も虚しく彼の首に腕を回してしまうのだ。



そして丁度、彼の首筋に俺の唇が当たる。




「もっと素直に甘えたっていいのに。
そのために俺はいるんですよ。」


柏木がさっきよりもっと甘く俺の頭を撫でる。



こいつの方こそ無理してるんじゃないのか…
俺にまで気を使って…







俺ばっかり甘えてるみたいだ。







首筋を噛んでやった。




「っ!?」


彼の体が跳ねた。


「何するんですか?」



「お前人のことばっか気ぃ使いすぎ。」

「そんなことないじゃん。
俺はこーやって榊さんとゆっくりできるだけで落ち着くんだよ、

…っ!?」



舌先で彼の首筋を愛でる。



「ッは…ぁ、

ちょっ、何です、か…



酔って…、の?




ん、

ッぁ…」




今まで女にやってきたのと同じようにすると
彼は今まで見せたことのないような色っぽい仕草を見せた。








俺よりずっと大きな体がぴくぴくと震える。


それが可愛くてついその行為に夢中になる。




しかし、柏木は両手を掴み俺を引き剥がした。


彼は肩で息をしながら俺をぎゅっと抱きしめた。



「だめだよ…これ以上は…」

そして俺の額にそっとキスをする。


今まで慰め程度に軽いキスをしたことは何度かあった。

しかしそれ以上はなく、したいとも思わなかった。


友達以上恋人未満。

陳腐な言い方をするとそれが一番近いかもしれない。



やはり同性である以上これより先の行為は望ましくないのだろうか。




「ごめん、嫌だった?」


そう尋ねると彼は首を横に振って切なげな表情をした。



そして、

「終わりが来そうで怖い。」


そう呟いた。





柏木の言わんとしていることはなんとなく分かる気がした。

友達でいれば一生側にいられる。


しかし、一歩踏み外せばそれは『バイバイ』と容易く手を振る恋人みたいになりかねない。



だからこそ友人の一線を越えてはいけないという意識が生まれるのだろう。





そうだよ、
彼は大切な友人なんだから。



俺は彼をぎゅっと抱きしめ返した。

「大好き。」



その一言で彼は優しい微笑みを向けてくれる。



「俺も。
大好きですよ。」


そして彼の体温がふわっと離れた。




「お互い明日も仕事ですし、そろそろお暇しますね。

お風呂ありがとうございました。」


柏木はぺこりと頭を下げるとさっさっと玄関へ向かっていった。


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