嘘吐き

□夜空に捧ぐ
1ページ/9ページ





『勉強してる?』


涼からの短いメール。

『してない。』

俺の短い返信。




“してない”っていうより実際は“できない”に近い。

お前のことが気になってしょうがねーんだよ。

なんて、口が裂けても言えないけど。


でもそんなことも言ってられない。

だって俺らは受験生だ。



涼は、サボりがちの体育さえ成績は良くなかったが、他の科目は俺なんかよりずっといい。

羨ましいよ。





『しろよ。』

と返信が来る。


俺はどこにも向けることのできない気持ちを抑えて、

『できないんだよ。』
と返した。


彼女がいたときもこんなに苦しくなったことはなかった。
それなりに好きで付き合って、可愛いと思って、嫉妬もした。

でも今までとは何かが根本的に違っていた。

嘘だろうって。勘違いだろう。
って。
はじめはそう思った。

だって相手は男だ。
本当は今でも認めたくない。

心の中ではずっと否定し続けている。



―俺は、ただの友達として涼が好きなんだ―


でも、そう繰り返せば繰り返すほど苦しくて仕方なかった。


夏の長い陽も落ちかけて、切ない夕陽が窓に迫る。


苦しいよ。

涼、苦しい。

握りしめた黒い携帯がそんな心とは裏腹に陽気な音楽を発する。








『お前相当ばかだもんな(笑)

教えてやろうか?』

表示された文字に嬉しいのか切ないのか分からない気持ちになる。



『教えてよ』


涼に会いてーよ、





別に今のままでいいから。
叶わない関係なんて望まないから、
だから、せめて、会わせてよ。

馬鹿みてー。

男を思って泣きそうだなんて。
バカじゃん。




そして、陽が落ちても鳴らない携帯を閉じると同時に僅かな希望もカランと落ちた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ