嘘吐き

□take it easy 第4話
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まさか、と思っていたことが現実となったのだ。


宮脇の柏木に対する好意を目の当たりにすると目眩がした。

それがなぜか俺には分からなかった。


お酒が入っているせいもあって少し気分が悪くなったので
夜風でも浴びようと静かに部屋を出た。


残りの3人はまだ楽しそうにきゃっきゃしていた。




俺はやりきれない気持ちだった。







ずっと、ずっと


柏木は特別だという気がしていた。


好きだった。



しかし、それは恋とか愛とか男女の間に生まれやすい
そういう浮ついた感情ではないと思っていた。


俺はそう思うことで自分をマジョリティに留めようとしていた。

そしてあらゆることから自分を守ろうとしてきたんだ。








柏木がどう思っているかは分からないけれど
俺はきっとそういう意味で彼を好きになってしまっているんだ。



その事実を受け入れている宮脇があまりにも大きな存在に思えて
俺もまたその事実を受け入れることを迫られているようだった。





外に出ると空一面に銀河が流れていた。






「榊さん!」









宮脇だった。



「どうしたんですか?いきなり。」


「ちょっと目眩がしたから外気にあたろうかなーって。」


「うそ、大丈夫ですか?」





「大丈夫だよ、大袈裟だな。」


俺は困ったな、と微笑んだ。


並木道を抜けて自然に囲まれた公園へと歩く。


なぜか宮脇もついてきていた。


「なあ、別に俺は大丈夫だから部屋戻っててもいいんだよ?」


「俺も歩きたいんですよ。」


「そ。」



立派な木々に囲まれた公園に出ると、
白塗りの木造のベンチに腰かけた。






「なあ、宮脇…」




「なんでしょう?」



「宮脇は…

柏木のこと好きなの?


なんてゆうか、

そういう意味で。」








「あー、そのこと。
どうなんですかね。


好きだけど…

今は
そういう

愛してるって類とは違うのかもしれません。」


珍しく切なそうに笑う宮脇は今までと違って急に大人びて見えた。



「榊さんは?」


「え?」


「榊さんはどうなんですか?

柏木店長のこと好きなんでしょ?」


どくん、と心臓が重く跳ねた。




「はは、

そうだなー。

好きだよ、仕事仲間とし…てっっ

…!」


ぐっと腰を引き寄せられた。

前向きに座っていた体勢を急に横にねじる形になる。




「ちょ…
おまえなんだよ!」



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