嘘吐き

□-other side-
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俺らは毎日まいにちそれは嫌になる程、グラウンド整備を繰り返した。

それまでは火曜の5時限目に、屋上で言葉を交わすくらいの関係だったが、
明らかにこの3週間で俺らの友情は深まっていた。


友情なんて生易しい感情では抑えきれなくなっているのが難だが。


将にヤキモチを妬かせたいが為にわざと彼女の手を握って、
彼の前から立ち去ったこともあった。

将に自覚させたかっのだ。

ーおまえは俺のことが好きなんだーと。




毎日グラウンド整備をしたおかげで体育の単位は取れるし、
将との距離は縮まるしで俺にとって大変、好都合な出来事だった。


しかし夏休みがやってくると同時にグラウンド整備というラッキーな口実は姿を消した。


夏休みという名の、バカンスの牢屋に入れられてしまえば
理由なく将に会うことはできなくなる。

この3週間、放課後は毎日将と過ごしてきた。
それだけにつらい。
グラウンド整備はそんなサイドエフェクトまで俺に与えてくれたようだ…。
俺はどうにか牢屋を脱出しようと将に会う口実をつくった。

受験生であるということを利用して勉強を教えることにしたのだ。



図書館にいるから来いよ、って。

将が来るなんて保証はなかったけど、
俺は来ると信じてやまなかった。

















そして







予想通り将は来た。


久しぶりに将の顔を見た俺は、今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られた。


だってこいつ、涙ぐんでる。


「勉強してて眠れなかった」なんて言い訳してるけど、



バレてるよ。








いい加減、自分の気持ちを受け入れて俺を求めて来いよ。








勉強道具持ってくるのも忘れるくらい
俺に会いたかったんだろ?







将は教科書も筆箱も何も持ってこずに自転車でここまで飛ばしてきたのだ。


だから俺らは勉強会(と銘打ってはいるが、実際は俺が会いたかっただけ)をやめ、
2ケツしてファミレスに向かった。


行きしなは俺が自転車をこいだ。

俺の腰に腕を回し、背中にぴったりと頬を寄せる将を背中に感じて愛しさがこみ上げてきた。




そして帰りは将がこいだ。

俺は小さい将をぎゅっと抱きしめるようにして
自転車の後ろに跨った。


ずっとこいつを離したくないと思った。





そして俺はまた会える口実をつくる。




「花火大会、行こ?」
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