青天の霹靂

□青天の霹靂
2ページ/7ページ





木造の古い家には、
やはり誰も住んでいなかった。

だが、昔誰かが住んでいたとみられる
家具などが置かれたまま、
静かに時を刻んでいた。



「ひゃー…、」
「…なんだよ」
「古ーい…、」
「掃除すりゃなんとかなるだろ、」
「ひゃー…、」
「…。」


実仁は古いよりも、本当は
家の狭さに驚いていた。


居間は台所も含めて僅か八畳ほどで、
そのほかには寝室らしき部屋が一部屋。


(こ、ここでふ、ふたりか、!)


今までなにも思わず
ふたりで歩いていたのに
狭い部屋を見た途端、
恥ずかしさと緊張がこみ上げてきた。

同時に顔が熱くなるのを感じて、
実仁は両手で頬を覆った。


「ひゃ、ひゃー…、!」
「次はなんだ、」
「えっお、お腹空いた なーん、て…」
「まだ早ぇだろ…」
「いや、うっ動いたから かなー、」
「あれ、飴食ってろ。」
「は、はぁーい…、」


(わたし、なに緊張してるの、)


別にお腹も空いていないけれど、
実仁は言われたとおりに
飴玉をひとつ
口に放り込んだ。

それは真っ白なハッカ飴。

独特の味がして、空気を吸うと
妙に冷たく感じる。


実仁は、心を落ち着かせるかのように
何度も冷たい空気を吸った。


(すーすー、する。)












それからしばらく、ふたりは家を
隅々まで掃除した。

かなりの年月がたっており、
荒れ方もなかなかのもの。

掃除機も洗剤もないため、
かなりの時間がかかった。

だがそれだけ時間をかけた甲斐もあって
家は見違えるほど明るくなった。


埃ひとつ見当たらない。


「は、ははー、きれーい。」
「これで住めるだろ。」
「で、すね。」


つかれたー、と実仁独特の間延びした
声とともに、磨いた床に座り込んだ。


「たか よしさーん、?」
「あぁ?」
「お腹、空きません か?」
「少し、な。」
「わーい。」
「何か買ってくる。」
「わ、わたしもいきます、」
「あぁ。」


実仁と高允は、笠を手にとって外に出た。
外にはまだ見慣れない大木に少し驚く。

掃除していた時間が余程長かったようで、
もう日は落ち始め、鈴虫の声がする。




.

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ