青天の霹靂

□青天の霹靂
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朝から気温の高い日だった。


窓からはきらきら暖かい日の光
空はぽっかり晴れている

最高の外出日和に、
実仁は着物を着付けながら微吟した。



「たかよしさーん。」
「あ、?」
「荷物纏めましたよー。」
「あぁ。」







宿を出るとき、高允は実仁に、
風呂敷と笠を渡した。

鴇色の風呂敷と、高允と同じ形の笠だ。



「?、何に つかうんです、か?」
「その鞄それで包め。あとそれ被れ。」
「え、?」
「その鞄と頭、目立つんだよ。」

お前も顔知れちまったからなあ、と
高允が小さく付け足すと、
あぁ、と実仁は漸く納得した。


茶色い髪の毛に
鞣し革のスクールバッグ


どちらも、この時代には
そぐわないものだった。




実仁は言われた通りに、
スクールバッグを鴇色に包み、
笠を深めに被った。
笠が大きくて、嫌でも深めになる。


そうすると、割と

『江戸時代の人間』

に見えた。



(映画に でれそう、)




「ほら、行くぞ。」
「あ、はいっ」


ぼうっとする実仁を高允が急かし、
ふたりは宿を出た。




(押し入れ、わりと好きだったなあ)


実仁は振り返ってそんな事を思ったが、
思考を断ち切り、歩き出した。




(またね、)















初めてゆっくり歩く江戸の街は、
昼間から活気のある所だった。


街角では商いをするもの
野菜や着物や傘や桶
色々なものを並べている。


それを見る親子や若人


実仁はそれを無意識に目で追っていた。
そんな実仁を、高允は見下ろした。



「ちいせぇ…。」
「っへ、?」
「いや何でもねえ。」


つい口から出たその言葉を、
実仁は聞き逃さなかった。


「…ちっ、小さいって言っ…!」
「…聞こえてんじゃねえか。」


(少し わすれてたのに…、!)


実仁は一番気にしている
身長をの事を言われてか、
複雑な顔をした。

泣きそうな、怒りそうな


「…ひでぇ顔、」
「…!」


高允は言ってから、しまったと思った。


その瞬間、実仁は膨れて口を噤んだのだ。


それもその筈、
一番気にしている身長の事を言われ、
女の子なら誰でも気にするであろう
顔の事まで言われたのだから。




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