青天の霹靂

□青天の霹靂
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実仁は先程の橋へと走った。

どうやって助けるか、なんて

考えていなかったけど。




―「なぁ、何してんだ?」―


あの高允さんの言葉が頭から離れない。

怒ってた な。

許してもらえる かな。




助けてもらったのに、逃げるなんて

わたし

最低。


(自分を咎めても、どうにもならない)








「っはぁ、はぁ、っ…、」


先程の金色の薄をかき分けて行く。
休んでいた虫が飛ぶ。




そして薄は尽きて、


見えた木造の橋の上には















「た、かよし さ…っ」



「…実仁、…?」





刀を持って立つ、

真っ赤に染まった貴方。


それは、誰の血?



そして高允の足下には、


沢山の、

赤く染まった侍達。

きっとそれはもう、

叫んで追ってくることはない。




「たか よしさ…ん、!」




大丈夫?と言いたい。
でも恐怖で声が出ない。


初めて見た血に染まる人間。
生を宿していない人間。


銀色だった刃から、
赤い液体が滴り落ちる。



体が勝手に震える。

わたしは自分で自分を抱き締めて、
震えを止めようとした。


立っているのも、辛い。





(なんて、情けないの)



彼は怪我をしているかも知れないのに、
どうして何もしていないわたしが
震えるの?


(怖がる 資格もない)










「お前、どうして戻ってきた―…」


震えるわたしを見て、高允さんは目だけをわたしに向けて言った。


「ど、うしてって…!」




わたしは高允さんに駆け寄った。

すると、高允さんは刃をわたしに向けて






「…近寄んな、」



ただ一言言った。


――ズキッ





胸が抉られるようだった。
わたしは言われるが儘に立ち止まる。










「ったく…また斬っちまった、」

「っ…、」



其れはわたしの所為。

わたしが約束守らなかったから。


声が出ない。

謝ることすら、出来ないよ。




「…何で外に出てんだお前は、」


呆れた声で言う。
当然の事。



「ごめん、な さい…っ」

「答えになってねぇ。」


わたしは彼の鋭い目が見れなくて、目を逸らした。





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