青天の霹靂

□青天の霹靂
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晴れを望んだ昼日中、
今も相変わらず雨だった。
白い昼はゆっくり更けて行く。


実仁は持ってきていたルーズリーフに
絵を描いていた。


それはシャープペンシルで描いた物で、
上手いとは言えない花の絵だった。
花弁を描きすぎて何か分からない。


絵の模範は襖の絵らしい。
窓際の壁に寄りかかりながら、
襖を見ている。



(これは菊かなー…)



何て暇なんだろう。
でも、こんな時間も久々で、




(少し、嬉しいや)



ひとり口角をあげてみた。













――――その頃、


高允は雨が地面に跳ねる中、
草履を濡らしながら歩いていた。

頭には水の滴る笠を深く被り、
顔が見えないようにしている。

着物の裾は雨で濡れて、
色が濃くなる。


冷たい雨は体温を奪ってゆく。




「…、」

(今日は、霧で見えねぇな…)


高允は笠を人差し指で少し上げて、
見果てぬ街をみた。
雨による霧で、視界が暈ける。
独特の冷たい匂いに鼻がこそばゆい。



(もう少し、)

朝から歩いていた高允は、
もう疲れているはずだった。
だが、高允は止まることなく歩く。


道行く人の顔をひとりずつ見ながら。


まるで何かを探すかのように。



――――――――――
―――――――
――――
――



まるで永遠に降り続くような雨も、
昼下がりにはすっかり止み、
天上には青空が合間見えていた。



(流石に、ひ ま―…、)


雲の動く空を見ながら、
実仁は退屈に退屈していた。



畳には、沢山の絵が散らばっている。


花の絵。
街の絵。
空の絵。
人の絵。



どれも酷く 拙い。



絵を描くのが好きな実仁。
その割には酷い絵。




(もう描くもの ないよ、)




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