青天の霹靂

□青天の霹靂
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日の昇りきった頃、
高允は出掛けるぞと言い出した。
一晩乾かした教科書も、すっかり乾いていたので、鞄へ入れていた時の事だった。

「…どこ行くん です、か?」
「ほら、お前昨日言っただろ、」

実仁は何か行っただろうか、と首を傾げて思いだそうとした。

「…はて?」
「…着物だよ、」


―あぁ、

『今度お礼がしたいです。』

わたしが昨日着物を貰ったときに言った、あの言葉のことかな。


「連れていってくれるんですか、?」
「行くっつったろ。」

この人はぶっきらぼうでやりにくいなあ、なんて思いながらも、実仁は喜んだ。

「早く用意しろよ。」
「はいっ」


昨日の今日出会ったばかりなのに、どうも居心地が良い。
なんとも不思議だ。

(お互いなんにも知らないからだね)



急いで実仁は髪の毛を櫛で解かして、服装を整える。
持っていける物など無いので、すぐに出かけられた。


玄関に行くと、昨日履いていたローファーの横に、赤い鼻緒の下駄が置いてあった。

「これ、」
「履け。」
「ありがとう、ございます。」

履き慣れない下駄は、大きさはぴったりで、まるで足のサイズを知っていたみたいだなあ何て思った。

下駄は高く、背が伸びたような錯覚に陥った。
昨日見上げなければ見えなかった高允の顔が見やすくなる。

足を動かす度カラコロ鳴る下駄の音が綺麗で、歩くのが楽しく思えた。


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