青天の霹靂
□青天の霹靂
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(あれ、?)
実仁は目を開けると、目の前の空の色が変わっていることに気づく。
どうやら窓際に手を付いたまま寝てしまったらしい。
枕にした左手が鈍く痺れている。
そういえば昨晩出ていった高允は帰って来たのだろうか、と実仁は存在を確かめるべく体をゆっくり起こした。
「あ、」
実仁が起きあがると、自分に何かが掛けられていた事に気付いた。
それは、着物だった。
その存在は、高允が帰ってきたことを示している。
季節は秋、これが掛かってなかったら風邪を引いていただろう。
(高允さん、いるのかな。)
よく易々と知らない男の前で寝れたよなあと実仁は思った。
今思うと恥ずかしい。
昨日余程疲れたのか、脳にはまだ眠気が残り欠伸が出る。
その現象は、酸素不足により起こるといつか聞いたことがある。
窓を覗くと、やはり昨日の出来事が嘘ではないと物語っていた。
古い家屋。
髷を結い着物で歩く街の人。
部屋には未使用であろう行灯。
そして窓際に並べられた教科書達。
実仁は窓際の右端に置かれたピンク色の携帯電話を手に取った。
非常に諦めが悪いと思いながらも、もう一度光った画面が見たいと通話終了ボタンを長押しした。
すると、
…〜♪
「あ、!」
電源が着いたことを知らせる音が鳴り、画面は青白く光った。
(よかった!)
だがその歓喜も虚しく、
ピ―ピ―ピ―…
電池切れだと携帯電話が知らせる。
「意味ない…、」
でも壊れたよりいいかなあと、そっと携帯電話を閉じた。
すると突然後ろの戸が開き、
「なんだ?今の音…」
昨晩出掛けていった高允が出て来た。
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