青天の霹靂
□青天の霹靂
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実仁は、とりあえず横に浮いている日本史の教科書を手に取った。
“日本史”と赤い文字で書かれた2センチほどの教科書は、水が染みきっており、重さを増していた。
所々に描かれた挿し絵は、水により色を変えている。
薄い紙と紙がくっついて、上手く捲れない。
ふやけて柔らかくなった教科書は、乱雑に扱えば、今にも千切れてしまいそうだった。
「あらま…、」
実仁は教科書の惨劇に小さく声を上げた。
それを持ち上げると、ぱたぱたと水が滴り落ちる。
滴り落ちた水滴は、水面にぶつかり小さくなって跳ねてはセーラー服を汚す。
(…それどころじゃ なかった、)
実仁は濡れた教科書を、しっかりと掴んでいた鞄に入れた。
鞄も水に浸かってしまっていて、中に入っていた教科書や体操着が水を含んで重くなっていた。
(仕方ない…、)
その重たくなった鞄を肩に掛けると、実仁は川岸に向かって歩き出した。
水圧によって足取りは重いが、川の流れは強くないため、割と歩きやすかった。
その時、横目に橋の上に立つ人影が見えた。
(やば!怒られるかも、)
実仁は見なかったことにして、早足で川岸へと歩いた。
だが、その行動も虚しく、
「おい、餓鬼。」
話しかけられてしまった。
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