詰め合わせ
□素直なキモチ
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「何、またフラれたの?」
心底おかしそうな声が背後から響いた
よく聞き慣れた声
「うっさいなぁ。アンタには関係ないでしょ!」
パチンと小気味良い音を発てて閉じた携帯をジーンズのポケットに捻じ込めば、目の前の男が「はいはい」と人を小馬鹿にしたような返事を寄越す
「ホントに長続きしないよねー。他に好きな奴でも居るんじゃないの?」
「アタシに?居る訳ないじゃん、そんなの」
好きって言われたから付き合ってみた
一人目は束縛されすぎてメンドイから別れた
二人目は何人も女が居るみたいだし、そんな奴に囲われてるのが嫌だったから別れた
他にもそんな理由で別れた奴が何人か居て、気付けば終わってたって事も何度か
今回のは『他に好きな人が居るんだろ?』だって
向こうから別れようって言われた事も何度かあるけど、これは初めて
好きでもない奴とだってテキトーに話合わせて、テキトーにお互い好きな事をして、嫌な事は押し付けない
押し付けたり押し付けられたら、その時はサヨナラ
だってお互いテキトーな付き合いを求めてれば一番楽じゃない
内面なんて見ない見ない――…
『うーん…カオに出ちゃってるのかな』
初めて悟られたキモチに、少なからず胸が跳ねた
勿論、嫌な方に
私は「そうかもしれないね」と短く返事を書き、別れを告げる彼の言葉を承諾した
書き終わったメールを転送し、彼と交わした全てのメールを削除する
もう彼と繋がる事は無い
これでサヨナラ
アイツが私に声を掛けてきたのは丁度そんな時
いつも唐突に現れては風のように姿を消す
近くに居るようで近くに居ない、変な奴
「ホントに好きな人居ないの?」
どうしてアンタまで他の男共と同じ事を聞くの?
アンタの口からだけは聞きたくなかったのに
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