僕のヒーローアカデミア小説
□紅蓮ノ恋情6
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轟との関係もうやむやなまま迎えた職場体験。課題は山積みで轟とのことを考える余裕もなく時間が過ぎていく。
深夜に特訓をしていると尻ポケットに入れたスマートフォンがが震えた。小休止がてら画面を見ると轟からメッセージが届いていた。
『そっちの調子はどうだ?』
短い文面ではあるが轟なりの気遣いが感じられて思わず笑みが浮かんでしまう。悩むこともあるけれど轟のことは好きだ。ぶっきらぼうだし二人きりになるといやらしいことをしてきたりもするが基本的に優しい。不器用だけど真っ直ぐで、健気で・・・。
―――好きだ。緑谷・・・。
ふと轟の声を思い出し、出久は一人赤面した。離れてまだ一日も経っていないのに随分と長い時間、轟と逢っていないような気持ちになる。
慣れない場所で迎える初めての夜だからか、それとも・・・。一つの可能性が頭を過り出久は考えを打ち消した。こんなことを考えるのは止そう。今は職場体験に集中しなくてはいけないのだから。
『ボチボチかな。学ぶことが沢山あって時間が幾らあっても足りない気分だよ。轟君の方はどう?』
気を取り直してメッセージを送るとすぐ返信が来た。
『相変わらず親父がうるせぇ。けど学ぶことも多い』
文面から嫌そうな顔をしながらも父からヒーローについて学ぶ轟の姿が想像できて出久は小さく笑った。同時に気持ちが落ち着いてきた出久は手早くメッセージを打ち込む。
『そっか、お互い頑張ろうね!』
『あぁ、そうだな』
短い文章のやり取りではあったが随分と気持ちが晴れたように思う。この調子で、もう少し自主練に励もう!そう思っていると、またメッセージを告げるバイブが手のひらから伝わってきた。
『お前に逢いたい』
続けざまに送られてきた轟からのストレートな気持ちを表したメッセージに胸がツキンと痛くなる。
僕も逢いたい・・・。
そう思って気持ちのままメッセージを打ち込もうとして止めた。まだ轟の気持ちを受け入れる覚悟は出来ていないから・・・。
『一週間なんてすぐだよ。また学校でね』
代わりにそうメッセージを送った出久はスマートフォンをポケットに戻し、溜め息をつく。
おそらく自分も轟に惹かれているのだと思う。けど、まだ自分の気持ちに確証が持てない。轟が自分を想ってくれているよう、自分も轟を本当の意味で好きなのか分からない。分からないから、答えを出せない。
ウジウジと悩んでいる自分が情けなくて出久は夢中で鍛練に励んだ。
※
血の臭いが漂ってくる。人気のないごみ捨て場には手負いのプロヒーローと友人の飯田、それから今世間を騒がせているヒーロー殺しがいた。
傷付いた飯田を見て動揺したし怒りも感じた。けど不思議と平静は保ててた・・・と、思う。咄嗟に救援要請を送信できたし自分なりに思うよう動けていたと思う。
けど、駄目だった。全力で挑んでいたにもかかわらずヒーロー殺しの能力で動きを封じられた。
地面に平伏す出久の眼前をヒーロー殺しは歩いていく。その先には飯田が居る。
守りたい。友を守り、救いたい。
思いとは裏腹に体は動かない。そうして藻掻いている間にヒーロー殺しの刃が飯田へ向けられる。
このままでは飯田が殺されてしまう。目の前に救うべき人が居るのに何も出来ない。
出久は喉が潰れてしまうほどの声で叫んだ。
―――その直後である・・・。
「―――!?」
紅蓮の業火がヒーロー殺しへ向け、襲いかかったのは・・・。
この炎は・・・。
信じられない思いで振り返った先、半身に炎を灯す轟の姿があった。
悠然と佇み、助けに来たと言う轟の姿が出久には他の誰よりも格好いい最高のヒーローに見えた。
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