僕のヒーローアカデミア小説
□仮初メ彼氏
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体育祭も終わり、迎えた学校生活。それは嵐のようにやって来た。
「緑谷さん、私の可愛いベイビーを試してみてください!」
放課後のこと、帰宅しようと廊下を歩く出久を呼び止めるハツラツとした声がした。それに足を止め、出久は振り返る。声の主は発目だ。手には何やら首輪のような物が握られている。 アレは何だろう?不思議に思っている間に目の前で足を止めた発目は件の首輪らしきモノをズイと鼻先へ突きつけてくる。
「さぁ、これを着けてください!」
そして開口一番コレだ。見た目は可愛らしい少女なのに性格は強引過ぎるほど強引だ。
「えっ、あの・・・」
「さぁ、さぁっ!」
出久の戸惑いなど気にも止めず首輪らしきモノをグイグイ押し付けてくる。体育祭で発目のサポートグッズには随分と助けられた。けど今、鼻先に突きつけられているモノは用途不明な怪しい道具でしかない。
どうにか逃げないとと考えている間も発目の勢いは止まらない。ついでに発目の背後から見覚えのある男が苛立ちも露に近付いてくる。幼馴染みの爆豪勝己だ。いつも怒った顔をしているが今日は殊更怖い顔をしている。
「おいっ、デク!」
その上、自分の蔑称を呼んでいるものだから質が悪い。発目と押し問答をしているにも関わらず勝己が間に割り込んできて揉みくちゃ状態だ。それだけなら良かったのだが・・・。
「あっ・・・」
「あら?」
「あ゛ぁっ!!?」
揉み合いに巻き込まれた勝己の首にあろうことか厳つい首輪がガチャリと嵌まってしまったのだ。三者三様の声が廊下に響く。どうも今日は厄日らしい。
「なんだ、コレ・・・!」
我に返った勝己は不快感も露に首に嵌まったモノを掻きむしる。その際、指先が首輪の突起物に引っ掛かった。
「あ、そのボタンは・・・」
それに気付いた発目が何か言わんとするも時すでに遅く・・・。
「い゛ぃっ・・・!?」
メカの起動スイッチだったらしい突起物を押してしまった勝己は電撃でも浴びたよう体をビクンと跳ね上がらせ、直後、床にうつ伏せの状態で倒れこんだ。
「か、かっちゃん!」
「・・・」
驚いた出久は膝をつき、慌てて声を掛けるも勝己からの反応はない。
どうしよう・・・。
嫌なヤツだけど昔は憧れていた大切な幼馴染みだ。
「かっちゃん、大丈夫!?」
不安に駆られる出久は勝己の肩を揺すり、重ねて声を掛けた。すると、ややあって勝己の体がもぞりと動いた。良かった、とりあえず意識はあるらしい。
「デク・・・」
うつ伏せの体勢で顔だけを上げた勝己を見て出久は心底ホッとした。ただ倒れた際に頭でも打ったのか勝己はぼんやりとした顔で此方を見つめている。
「どうしたの?どっか痛いの?」
心配になって勝己の顔を覗きこんで訊ねる。すると勝己の目が熱に当てられたようとろんと蕩けた。
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