プラリネは相思病。
□No.2/オランジェット
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「余計な事したな…」
悪かった。
一言そう言ってまた大通りへ体を向けると思いっきり腕を引っ張られた。
「んだよ…」
「何だよじゃないわよ!
今日何も食べてないの!せっかく、お金ももらえそうだったのに…」
「悪かったと言っているだろ…」
「謝られたってお腹は膨れない」
「ならどう…」
「ご飯。」
にっこりと張り付いた笑顔をして
女はそう言った。
────
──
「おいしかったー」
「ったく…何でオレが…」
「当たり前でしょ。
本当はお小遣いだってもらえる予定だったんだから。」
ちまちまとコップに入った水を飲みながら女はツンと言った。
何故…何故、襲われていた女を、助けたと思ったのに、飯奢ってんだ…。
「ふん。どうだかな。
調子の良いこと言っておいて、
ヤり捨てられる可能性だってある。」
「そんなの分かってるよ。もし逃げるような事があれば身包み剥がすだけ」
ニコニコと恐ろしい事を言う女は
頬杖をついて此方を見つめた。
「そんなの、
女のお前に出来るわけ…」
「さっき貴方が喧嘩ふっかけた
近くにお酒屋あるでしょ?
そこの息子さん、
今怪我して杖ついてるの知ってる?」
何故突然、酒屋の話が出るんだ。
と、思ったが面倒なので合わせる。
「あぁ、
何でも脚の関節痛めたとか…
まだ若いのに何やってんだって
笑われてたな」
道で偶々聞いたおっさん共の話を思い出しながら返事をする。
待て。今の話しの流れでいくと…
「まさかと思うが…」
「そう、あいつ金持ってるくせに
逃げようとしやがったから」
嘘…?だよな。
甘ったるい笑顔が逆に怖い。
ちゃんと奢ってよかったかもしれない
「嘘だと思うなら、酒屋の主人に訊いてみなよ。すっぽんぽんのボロボロで帰ってきた。って言うよ」
「…」
「じゃっ。御馳走様でした。」
──ガタッ
女は立ち上がり、
リボンをほどいてニコッと笑った。
「…おい、また明日も、金蔓探して身体売るのか」
「ちょ…そんな言い方って。」
オレの言い方が気に食わないのか
上手く笑えてない。
「まぁ、誰かさんのせいで
お金貰えなかったし?
本当なら今日貰ったお金で明日過ごせたんだけどねー」
わざとらしく語尾を伸ばし
女はリボンを指でくるくるしながら
去っていった。
チッ。
水を飲み干し、椅子にもたれる。
このイライラが、名前も知らない奴に
飯を奢るはめになったからなのか。
名前も知らない奴が明日も、
どっかの変態に抱かれるからなのか。
なんなのか。