貴方に嘘の花束を
□第六話
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目を丸くして、彼女は驚いていた。
けれどそれは一瞬で崩壊して、泣きそうになりながらこちらへ手を伸ばして来る。
「あなたあなたあなたあなたあなたあなたあなた・・・・・!!!!」
邪魔な点滴を腕から引き抜き、痛いだろうにそれに対して眉をしかめることなく。
二年半前と何も変わらない笑みを浮かべて。
「会いたかった・・・!!」
スリッパも履かずに裸足のまま、ミルフィーユは勢いよくエンヴィーに飛びついた。
痛々しくまかれた包帯を苦にもせずに頬と額を何度も擦り付ける。
「あなたにずっと会いたくてね、でも見つからなくて、でも会いに来てくれてそれが嬉しくて私私わたし・・・・!!」
言葉は支離滅裂で訳が分からない。
それでも嬉しそうな彼女の姿を見て、エンヴィーは口からこぼれそうになった言葉を飲み込んだ。
・・・・恨んで、無いの?
二年半前に何も言わずに打ち殺そうとした事。
それを謝りもせずにずっと会いに来なかった事。
一緒にいた時も、エンヴィーは嫉妬心を抑えるために色々と意地悪な事をした。
その全てを、彼女は恨んでいなかった・・・?
途方もない安心感。
彼女に恨まれていなかったという事実に自分でも信じられないほど安心していた。
「なぁんだ・・・」
悩んで、足踏みして、もやもやとした感情を溜め込んでいたのが嘘の様だ。
心は晴れ晴れとしていて清々しい。
「いっぱい話そう♪一緒にいなかった時の事。
それをどう思ったか、その間何に悩んでどんな大変なことがあったのか!」
年相応の可愛らしい笑顔を浮かべて。
「全部教えて!私、あなたの全部が知りたいの!」
信じられない脚力で飛び上がり、両腕をエンヴィーの首に巻きつけてぶら下がる。
前より少し、重くなった。
今まで一緒にいなかった空白の時間の長さを感じ、エンヴィーは複雑そうな顔を浮かべた。