貴方に嘘の花束を

□第六話
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「な、何考えてんだろ?」

 こぼれた涙を乱暴に手で拭いて、赤くなった顔をフードで隠す。
エンヴィーは今、ミルフィーユの病室へと向かっている最中だ。
確か四人部屋だったはずなので、他の入院患者を見舞いに来たように見せかければ彼女と対面せずに様子をうかがえる。

 人相を少し変えて、病室へと入った。
窓際のベッドに座った彼女の姿が目に入る。
エンヴィーが来ると同時にピクリと反応し、顔を上げた。
その視線が、エンヴィーに突き刺さる。

「あなた・・・・?」

 生憎病室内には誰も居なかった。
ミルフィーユにはどれだけ姿を変えてもエンヴィーの事が分かるらしい。
全く意図せずに、エンヴィーは彼女と再会することになってしまった。
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