貴方に嘘の花束を

□第二話
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「兄さん!!」

 急いでその後を追うアルフォンス。
人だかりの中心部をその高い身長で覗き込む。
そこでは、いかにもガラの悪そうな男達数人がある人物と相対していた。

 一匹の凛とした獣を思わせるその人物は、無表情の中にも確実な怒りを込めている。
しかし、その男達は興奮していてそれに気づいていない。
“女”と言っていたので、おそらく相手は女なのだろう。

 だが、その身長はエドワードよりも低そうだ。
女よりは少女の方が合っているだろう。

「だからよ〜、ちょっと一緒に来るか金をくれればいいんだ」

「あんまり手荒なことはしないし、な」

 下品な笑い声が響く。
そう言われても、少女は眉一つ動かさない。

「だったら、その小汚い手を放してもらえる?あなたの様な人間が触るような手じゃないわ」

「さっきから生意気な事を・・・」

 少女の手をつかんでいる男は、怒り心頭と言った様子だ。
他の男達は少女の発言を元に男をからかって笑い声をあげている。

「早く放しなさい。私は急いでいるの」

 そんなに急いでいる様には見えない少女が、無機質な声で話す。
その言葉にとうとうキレ、男は腕を掴んだまま、空いた手を握り締めて少女に殴り掛かった。

 その手を軽く避け、掴まれていない方の手で男の腕を叩く。

  ボキッ 

 鈍い音が響き、男の腕が折れ曲がった。

「あああああああああ!!!」

 痛みに呻き、男が退却。
他の奴らは仲間がやられたことで憤り、少女に殴り掛かる。

「・・・・十五秒」

 ポツリと呟くと、少女は動いた。
前後左右から来る攻撃を避け、最小限の動きで相手である男達を叩きのめす。
十五秒も経たない内に数人いた男達は全員が地に付していた。
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