貴方に嘘の花束を
□第五話
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死体は何を思うのだろう。
ふと、そんな疑問を感じた。
『死体』という事は、それにはもう意識は無く、自我も無いただの抜け殻なわけで。
でも、愛とか、憎しみとか、怒り、悲しみ・・・・・
そういったモノが、もしかしたら死体にもあるのではないかと思ってみる。
そんなことを考えるのは、文字通り、死体が目の前にあるからだ。
一人の少年の死体。
時間が経っているので硬直し、固まり、腐敗が進みかけた肉の塊。
死因はおそらく首が閉まったから。
それが分るのは、死体の首が紐で縛られて宙に浮いているからだ。
首つり自殺の死体
そう言ってしまえば済むことなのだ。
なぜ自殺かは、それまでの行程をすべて見ていたから理解できる。
彼は、自分で椅子を使い、窓の端に縄を括り付けて首を吊ったのだ。
死んで一体何がしたかったのかと聞いてみたかったが、その前に部屋のドアが開いた。
「素晴らしい・・・・・」
ドアの向こうから差し込む明かりが眩しい。
目を細めながら、相手を見る。
光を背に立つ男の横からすり抜けて部屋へ入ってきた数人の男達が少年の死体をあっという間に回収していった。
「素晴らしい・・・・本当に素晴らしいよ!見ろ!!
他にこんな少女がいるものか!!
たった五歳の少女が、自分よりも何歳も年上の男の精神を弱らせ、自殺させたんだぞ!」
そんなことを何度も叫びながら、男は私の手を引く。
まだ若々しい力のこもった腕が、私を掴んで離さない。
いつまでも、いつまでも・・・・・・
「いいかい、人は何にだってなれるんだ。
だが、それを決めるのは自分自身じゃない。
周りの者達の意志やその環境だ」
狂ったような目が私を映す。
そこに移る私自身さえも・・・・・・・・・・・・・・・・すべてが狂って、壊れて・・・・・・・・・・・・
「君は、私の兵器になるんだ」