貴方に嘘の花束を

□第二話
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 列車の汽笛の音が甲高く鳴った。

 駅の周りは人ごみが激しく、それにつられてか多くの店が並んでいる。
その中の一つ、小ぢんまりとしたカフェに一風変わった二人組がいた。

 席に着き、コーヒーカップを傾けているのはエドワード・エルリック。
国家錬金術師であり、二つ名は鋼。
真っ赤なコートと金髪の三つ編みが特徴的だ。

 その隣で地べたに腰を下ろし、子猫とじゃれているのは彼の弟、アルフォンス・エルリック。
二メートル程もある大きな鎧の出で立ちは一般的な街並みの中で非常に浮き立っている。

「・・・アル、そろそろ出るか」

 コーヒーを飲み終え、エドワードは席を立つ。
アルフォンスは子猫を飼い主である女の子に戻し、会計に向かったエドワードの後を追った。

「兄さん、どうする?大佐に挨拶に行った方が・・・」

「次はあの店だ」

 アルの言葉を無視して、近くの食堂を指さすエドワード。
数時間前からずっとそうして喫茶店やカフェを転々としている。

 つまりは、マスタングに会いたくないのだ。


「兄さん、これで何軒目?」

「うるせー」「黙れっ!!この女!!」

 エドの呟きと、何者かの声が重なった。
声の方向を向くと、何やら多くの人だかりができている。

 不穏な空気を嗅ぎ取り、エドワードは眉を顰める。
無言で人だかりの中に入っていった。
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