山あり、谷あり。(多分)
□黄金
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黄金1
……暑い。
今年の夏は猛暑だった。
が、太常寺ではそんなものは物ともしていない者がいた。
「奏夜さん、こんな暑い中平気な顔してられますよね。
暑くないんですか?」
「別に、そこまで暑くないでしょう?」
その言葉に驚いた彼は次の日夏バテで寝込んだ。
(あー、今日かな?主上がアノ話題だすの。
…いや、まだか。
調べによるとまだ根回ししていないみたいだし、でも主上のことだし…。
それに今回のことは俺は反対なんだよな。
この状況で万が一にも無理して通したら後々まずいことになるかもしれないし。
…大丈夫だよな。
俺が官吏だったらいろいろ注意しやすいのに。
あの糞爺と鬼畜先王さえいなければ…。
…受ける金ないけどさ。
官吏なんて忙しいのについたらあいつらが邵可様に迷惑かけるし、
そもそも医者になるの俺の夢だし、
毒作りやすいし、薬盗んでもばれないし。
…やっぱり先王腹が立つ!)
口では何とも思っていない様に言っており、
実際にそうな彼でもこの暑さは苛々するようだ。
その証拠に最初考えていたことからどんどん離れて行っている。しかも、そのことに気づいていない。
そんな彼だが、一つ決心したことがあった。
(…あーそう言えば、あと何日かしたら言うか、俺が『怜』であること。
静蘭からばれると面倒だし。
それぐらいはいっか。
いざとなればその時後見だった狸爺に面倒事押しつければいいし)