山あり、谷あり。(多分)

□紅風
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紅風1


彩雲国国主・紫劉輝(男・十九歳)に関する調書。

 一、家族事情---母親は幼いころ他界。
父親は八年前に病につき、一年前に崩御。
それを受けて彼が半年前に即位。
末の第六公子であり、上に五人の兄がいたが、そのうち三人は前王の病とともに勃発した王位争いで共倒れ。
残りの二人のうち第二公子は遥か昔に流罪にされ、
もうひとりである第三公子は公子が四歳のころに突如行方不明になったため、残った公子に玉座が転がりこむ。
いわゆる棚からボタモチ即位。

 二、政治姿勢---やる気なし。興味なし。朝議にも出ず臣下に任せっぱなし

 三、私生活---男色家との噂。毎晩別の侍官と夜を過ごし、
午はどこかでフラフラしているらしいが何をしているかは不明。
今現在紅貴妃以外一人の妃嬪もなし。





「ありえないわ」


秀麗はこの五日でまとめた調書にひくひくと頬を引きつらせた。

「……ふ……こんなのがうちの王様だったなんて……」


秀麗は文机に突っ伏したくなった。


「……どおりで金五百両も出すわけだわよ」
と、後ろから


「大丈夫ですか?」


男性の声がした。秀麗が恐る恐る振り、その姿を見てほっとした。


「……何だ、奏夜だったのね」
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