水底に沈む

□第二章 本当の花はどこに
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「涼誠っ!!!」

「お兄ちゃん!!!!」

「いやぁあぁぁぁあああぁぁあぁぁぁあぁあぁぁあぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁあ」





ガバッ

「・・・っ はぁはぁ、。」

まだ、日も昇っていなく涼しいなか

呼吸が定まらない。

もがきながら彼は起きた。

(・・・なんなんだこの夢は)

空には一羽の鴉が飛んでいた。

汗でぐちゃぐちゃになったシャツを

脱ぎ捨てるように着替えた。

着替えた後外を眺めてみると

刻々と日が明けようとしていた。

(俺は、何のためにここにいるんだ。

 俺は何をすればいいんだ。

 俺が生きている意味ってなんだ。

 何を追い求めているんだ。

 何もわからない。なのに時間は刻々と

 過ぎて昨日今日明日と・・・

 入る隙間なんてないようにめまぐるしく

 動いて・・・)


コンコン

「お客さん、すみません。お客さんに

お電話です」

宿屋の者が突然ドアをたたいた。

こんな朝早くから誰かと思いながら

ドアをあけ電話を受け取った。

「・・・もしもし」

「やぁ。元気かい?」

電話の向こうからはやけにテンションの

高い声が聞こえた。すぐに誰かわかった。

相手は、カナトだった。

本名は マル・カナト・エルキン

少し(いや、だいぶだが)変わり者で

鬼について研究している者の一人だ。

「・・・用件はなんだ?」

少年は質問には答えず、鬱陶しそうに

話した。

「せっかく電話をしたというのにずいぶんな

 返事だな涼誠。」

「・・・用がないなら切るぞ」

「すまなかった。どうか電話を

 切らないでくれ。」

「しかし、なんで俺の居場所がわかった?」

「ふふふ、君のいる場所くらいすぐわかるさ

 渦色町に行くところだろ?こないだの依頼

 のことで」

「・・・で、なんで電話してきた?」

「実はな、今日渦色町で祭りが開かれること

 になったんだ」

「あんな事件があったばかりなのにか?」

「あぁ、なんでも古くからのしきたりで

 この時期に開かなければならないらしい」

「・・・」

「そこで、毎年町の娘3人を着飾り踊らせる

 らしい。そして、渦色町いったいの神様を

 呼びよせるらしい。しかし、祭りというのは

 人々の心を活気に充ち溢れさせ

 心を揺れ動かす。それはいい方向に

 悪い方向にどちらにも。十分に注意すると

 いいよ。最後のバイラム(お祭り)に

 ならないようにね」

「では、健闘を祈るよ」

そういってカナトは電話を切った。


娘3人を・・・

祭りは人の心を揺れ動かす・・・

最後のバイラム・・・


窓の外をみると日があがっていた。

これから起きることに一抹の不安を感じ

ながら小さな荷物をまとめ宿のロビーへと

降りて行った。

 

 
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