make love.fake love.

□私だけって本当?
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―片想い?誰に…?なんてさすがに訊けるわけもなく、彼女に話しかけようと開いた口は閉じられた。Adamルームにて、二人きりの現在…名前がご機嫌に鼻歌を歌いながら荷物を鞄にしまっていた。片想いしてるというような歌だったことで、もしかして彼女は誰かに片想いをしている?と深読みをした茨は言おうとしていた言葉を飲み込むしかなかった。彼女に好きな人がいるのなら、尚更こんな関係を終わらせるべきでは?と考えていれば、恥ずかしそうに微笑む名前に話しかけられた。「今の下手くそな歌聴いてた?」と。


「聴こえてましたよ。誰かに片想いしてるんですか?」


「教えない」とくすりと笑う彼女は、「こんな関係終わらせましょうか。好きな人が出来たのでしょう?」と茨から切り出され、拳を握り締めた。「その話はさておき、送っていきますから一緒に帰りますよ」と、このまま自宅に送り届けてくれるつもりだろう彼の制服の裾を引っ張った。潤んだ視線で茨を見据える。振り向いた彼は訝しげな表情をして名前の言葉を待っていた。「この関係を終わらせたいわけじゃないの。それに、ずっと片想いのままでいい」と、彼女の言わんとしていることが茨には全く理解出来なかった。「自分と身体の関係を持っているなんて、相手の男性にバレたらどうするおつもりですか?」と彼の台詞はごもっともだったが、彼女は否定の言葉を繰り返すだけで。このままでは、今の関係すら危ういのでは?と危惧した故に素直に白状するしか手段が残っていなかった。


「茨なんだけどな。私の片想いの相手…」


「尚更理解し難いですよ。こんな最低野郎のどこがいいんです?」


「茨の、その性格も全部ひっくるめて大好き」と熱の篭った眼差しで明け透けに話してくれる彼女に呆れると同時に愛おしくなった。「自分は、愛情とかそういうものに応えられる自信はありませんよ」と、「ただ、今夜も名前を抱きたいと思うだけで」という一言は彼からのお誘いだったのである。二日前も彼の家にお泊まりしたというのに、頻繁だなぁ…と感じた彼女はくすりと微笑む。「随分とお盛んですね。茨くん」とからかうように笑っていれば、頬を包まれて耳元で囁かれた。「自分も男ですからね。断るなら、断ってくれても構いませんよ」と。断るものか。他の女性に鞍替えするわけでもなく自分だけを求めてくれるのが嬉しかった。だが、「私以外の女性も抱いたりしてるの?」と上目遣いで、こてんと首を傾げながら恐る恐る彼に訊ねてみる。ドッドッと心臓が脈を打つ。


「そんなリスクを冒すわけないでしょう」


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