本題。

□一話。
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ドイツにやって来た。
建物が大きいね。
ドアも大きい。
うん、大きいよ。



「とりあえず泊まるところを探すか。」



ドンッ
誰かがぶつかってきた。
うっひゃあ。



「いっ…た。」


「おっと、悪いな。一人楽しすぎてさ。」


「…は?」


「お詫びにお前の悩み事聞いてやるよ。聞いてやるだけだけどなっ!!」


「じゃあ言わねぇよ。」



なんだこの不憫な男は。
中国にもトルコにもいなかったぞ。
銀髪に綺麗に通った鼻。
うむ、ビジュアルに文句はない。
中身だな。



「けけっ、お前見ない顔だな。名前は?」


「名乗るほどの名前じゃない。」


「名乗るほどの名前じゃないさんか。長いな。」


「バカなんだろ。お前バカなんだろ。」



こんなやつ初めてみた。
まさかドイツ人って皆こんな感じ?
だとしたら計画変更だ。
日が暮れてでもフランスに行ってやる。



「兄さん、何してるんですか。」


「おぉ、ヴェスト。」


「?」


「こいつ、俺の弟な。」


「よろしくおねがいします。」


「あ、あぁ。」



オールバックだ。
似合う人は初めて見た。
まともそうに見える。
頼む、まともであってくれ。



「こいつの名前は名乗る「サキです。」なんだよー!嘘言ったのかよ。」


「嘘は最初から言ってません。あなたが勝手に早とちりしたんです。」


「ちぇっ。」


「…で、サキ。この辺じゃ見ない顔だが、どこから来たんだ?」


「イタリア。その前はトルコ。」


「旅しているのか?」


「はい。」


不憫が反応する。
なんだ、気持ち悪いな。



「おぉ、じゃあナツミさんに会ったか?」


「いえ、ナツミさんには会ってませんね。」


「けけっ当たり前だ。そんなのいねぇからな。」


「ぶっ殺すぞ。」


「おぉ怖い。」



腹が立つね。
すっげぇ腹が立つね。
重たい荷物を持ち上げて、泊まるところを探すべく歩き出す。
不憫がついてきた。



「どこ行くんだ?」


「泊まるところを探します。」


「今はどこもいっぱいいっぱいだぜ。」


「は?」


「ビール祭があるからな。世界各国からビール呑みに来るんだ。」



なんてこったい。
じゃあ今日は野宿かなぁ。
テントは嫌いなんだよな。
不憫がやけに私をじろじろ見る。
これは私を犯そうとしている目ではない。
じゃあなんで見るんだ気色悪い。



「どこで寝るんだ?」


「ここ。」


「まじかよ?」


「まじです。」


「ヴェストーッ、うちに予備のベッドあったよな?」


「ありますよ。」


「よし、じゃあ俺の家来いよ。いいっていいって。遠慮することねぇって。」



拉致された。
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