SHORT

□雨の日の王子様
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「雨‥‥ふってきたなぁ‥‥」


静かにザーザーと雨が降る
まぁ、この雰囲気的にわかるよね?
うん。そうさ、あたしは傘を持ってない

だって、火神くんが傘ないって言うから
貸しちゃった

あたしってお人好し


がくっと肩を落とす


もしもここが漫画だったらさ、カッコいい王子様が
「きみ、大丈夫?傘ないの?入るかい?」
みたいなことになるんじゃない?

まぁいたって平々凡々なあたしにそんなラブハプニングあるわけないけど


「平々凡々な坊っちゃんがいう「へーへー。ボンボンですけどなにか?」なーんて」
「ぶはっ!!」
「え?何?」


いきなり後ろから吹き出す音が聞こえて
なんだ、と思って振り返る

そこには紛れもなく
バスケ部でダジャレ好きで、何気にモテる伊月先輩がいた


「‥‥聞きました?」
「だから吹いたんだけど」
「いや、フツーぶはっ!って吹きませんよ!」
「いや!だって!いきなり女の子がそういうこと言い出すとは思わなかったから‥‥ふっくくっ」


多分思い出し笑いだろう
失礼だ。この先輩失礼だ

なんでこんな人がモテるわけ?!ありえない!!


「いやぁー‥‥平々凡々な坊っちゃんがいう「へーへー。ボンボンですけどなにか?」‥‥ね。それ!いただき!」
「どうぞ、あげますよ」


あたしははぁっとため息をついた


あー、もう
今日のあたしはついてないんだ

とゆーか



「先輩‥‥その傘なんですか?」


あたしは先輩の傘を指差す
だって、その傘はあまりにもセンパイに似合わないぐらいにファンシーだったから

ピンクのフリフリにウサギのロゴ

似合わない。似合わなすぎる。
先輩だったら黒の傘とか似合いそうなものを


「先輩そんな趣味が‥‥」
「いや、これ姉さんの!違うから!‥‥あ、違うから、血がうっ血してるだだから!やべぇキタコレ!」


勝手にやっててくれ

あたしは一人でダジャレをしている伊月先輩を無視して外を見た

やむ気配ゼロ

神様はここまであたしを嫌ってるかねぇ



「平々凡々ちゃん傘ないの?」


あたしの顔をのぞきこむように見る伊月先輩
おぅ、イケメン



「ないですけど‥‥てかその平々凡々ちゃんってなんですか!!」
「あはは」

あははじゃないよもう!


「じゃあ名前教えてよ」
「嫌です」
「なんでー?」
「なんでも」
「かんでも」
「‥‥」
「あ、怒った?」
「怒ってないです」
「生麦、生米?」
「生卵‥‥っておい!」
「平々凡々ちゃんナイスツッコミ!」


もうやだこの人


「はい」
「へ?」


いきなり目の前に出されたのはーーーー傘


「は?」
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