ぶっく

□無関心
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「文化祭嫌だなー」


とあるファストフード店の一角。


学校帰りの学生が大半を占めている店内に私たちはいた。


「だって今のクラス楽しくないし。サボろっかなー」


サキは隣のクラスで、確かに教室ではあまり楽しそうではなかった。


「この前も合唱祭の打ち上げサボっちゃったけど。まあ、いいよね」


「サキはサボる勇気があって羨ましいよ」


「何で?勇気なんて要らなくない?」


ストローを噛みながら"私なんて居なくても一緒だよ"と諦めたように言うサキ。


「そんな事ないよ」


「うちはミカちゃんみたいに器用に何でもこなせる人間じゃないから」


「私、そんなに器用じゃないよ」


炭酸の抜けたコーラをひとくち口に含む。


甘い。


「イベントに参加したくなくても言い訳がつくれないし。」


ストローがコーラと空気を吸ってズズッと音をたてた。


「それに…」


「それに?」








「怖いの」








そう、怖い。


クラスの一体感を乱す存在になるのが。


ノリが悪いって悪口を言われるのが。


とてつもなく、








怖い。








「"好き"の反対は"嫌い"じゃなくて"無関心"っていうでしょ。」


「聞いたことはあるけど…」


「私、違うと思う」


"嫌い"って目の敵にされるよりも、


いっそ空気の様に"存在している"ということさえ忘れてくれる方が良い。


「そうかな」


サキもコーラを飲みきったようだ。


ズズズッという音が響く。


「だって、







"存在している"っていうのを忘れられたら、
きっと、すごく、悲しいよ。」


サキがこちらを見る。


久しぶりにこんなにしっかりと見つめられた。


何も言わずストローをくわえる。

コップの中にはコーラは無く、ただ氷だけが少し残っていた。


「文化祭、暇な時あったらメールしてよ。
一緒にまわろう。
うち、サボらないから。」


私から目を離さずにサキが言う。








私はコップの氷を見つめながら頷いた。

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