旧約聖書
□論創
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妖しい声と共にゲーテの全身に恐怖が走る。
(な、何よこの人…。いきなり…さっきの奴か…?)
「いろいろ、聞きたいことがあるだろうけど…ゴメンね〜いまはその時間無いんだ。」
「ん…。」
全身の力が抜けてきている。まずい…。
――ガィン!!――
痛いほど響いた金属音。何回か続いた。
ハッと我に帰る頃はもう束縛が解けていた。
「失礼します、何方とはお見受けしませんが…。無益な戦いはしませんので。」
「ククッ…こっちには利益満載なんだよな〜」
怪しく口角を吊り上げ優雅に笑う青年はゆっくりと身を起こした。
ウルバンは脇に抱えているゲーテを見た。ピクリとも動かず此方を見ている。いや、正確には動けないのだろう。何かの術を施されている。
(この妖気…何やら怪しいですね。)
「ゴ…ゴメン……し、しくじった…。」