旧約聖書
□華美
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(……不覚…。)
ピンと音がした。
それと同時に体が勝手に動きだした。片手で救護隊員をはね除け吹き飛ばした。
「わぁ!!」
「ウルバ…うわああ…!」
バチンと鈍い音と共に数人がゲーテの横を勢いよくすり抜けていった。
並の力ではない。いくら漢士でも片手で人をはね除けるなど…。
゙ウルバン゙が、ゆっくりと立ち上がった。
「ウ…ル…バン?」
おぼつかない足取りだが確かにこちらに歩いてくる。眼が…ウルバンじゃない…どうすれば。とてもじゃないけどこの覇気。
「副隊長!お下がりください。」
部下が私を隠すようにウルバンに立ちはだかった。
全員で弓を引きウルバンに向けた。
…これが弓隊正式射撃演舞か…はじめて見た。
一人の隊員がウルバンに問いかけた。
「ウルバン殿、しっかりしてください!ウルバンさん!…ウルバン・フィフィ第四士。正気を持て!」
問いかけにも応じないところを見るともう耳は無くしたも同然か。
(…く…ウルバン…!)