小話

□まだまだ
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恋人。
そういう間柄になって、早半年。

一度だけ体をつなげた。

(あれは、確か俺の家だったな…)


実は、ここは誰もいない男子トイレ。
学校の一階の隅っこに位置するので使うものはほとんどいない。

恋人と二人きり。

唇を合わせていた。

その最中、ふとそんなことを土方は考える。

すると、

「土方さん」

名前を呼ばれた。

「ん?」

「今は、こっちに集中してくだせェ」

沖田は、そう言うともう一度唇を重ねてくる。

土方の思考が読めたのか。それとも、合わせた唇が一瞬物足りなく感じたのか。

沖田がそんなことを言う。

時々、鼻から漏れる息が甘い。
身体も熱くなってきた。

この感覚を、今週になってどれくらい感じただろう。

(二回?いや、三回? もっとか…)

ここ一週間、沖田が突然キス魔に変貌した。
二人きりになれば、直ぐにキスをしてくる。それも、何回も何回も。

しかし、場所も場所なので二人の熱はいつも中途半端なまま。
正直、身が持たない。 そう感じていた。

唇を離し、土方が口を開いた。

「総悟、今日は、何曜日?」

「金曜」

ってことは、明日は土曜日…

(ヤれる!! ヤれるではないかッ!!)

「今日、家こねぇ?」

「いいですけど」

土方は、この一週間で溜まりに溜まりきったムラムラを晴らすことができると、心の中で大きくガッツポーズをした。

やっと、恋人を抱ける。

天にも昇れる気分だった。



(ホント、鈍感で困りまさァ)

一方沖田は、顔には出さないが喜んでいる土方を見て笑みを浮かべた。

この一週間、沖田がキス魔になった理由。

それは、土方を誘うため。

めでたい奴だな。

沖田は、再び笑みを溢し土方をトイレから引っ張る出した。

家に帰れるまで、あと二時間は授業を受けなければならない。

不思議な昂りと共に彼らは、放課後になるのを待っていた。





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